こんにちは!ケンけんです.
今回は,この記事で挙げた「近傍」は「開近傍」を確認すれば十分であることを考えていきます.
それでは行ってみよう!
キーワード:近傍・開近傍
前提知識:PST-1~PST-6(用語を使用します)
開近傍
近傍の定義は次のようにしていました.
$(X,\mathcal{O}(X))$:位相空間 $V \subset X$ $x \in V$
$U$は$x$の近傍($\rm{neighborhood}$) $\overset{def}{\iff} \exists U \in \mathcal{O}(X) s.t. \; x \in U \subset V$
$\mathfrak{N}_{x}=\{V \in 2^{X}|Vはxの近傍\}$:$x$の近傍系($\rm{system \; of \; neighborhoods \; of }$ $x$)
この近傍が開集合の場合,特に開近傍と呼びました.
開近傍は近傍の特別なものなので,次の話題が出てきます.
- すべての近傍で成り立つ$\Rightarrow $すべての開近傍で成り立つ
- 「すべての開近傍で成り立つ$\Rightarrow$すべての近傍で成り立つ」は常に可能か?
この問題を「極限・内点・触点」などを見て解決していきます.
しかしすべての近傍が開近傍にはなりません.
集合$X=\{a,b,c\}$に対し,位相$\mathcal{O}(X)=\{\emptyset, \{a\},\{a,b\},X\}$とおく.
このとき,$V=\{a,c\}$は$a$の近傍だが開集合ではない.
なので,先ほどの主張は成り立ちません.
そこで,定義や命題で開近傍の場合を示せば十分であるかを考えてみます.
内点・触点 そして極限は?
さて,定義の検証とすると,内点・触点・極限の$3$つが近傍を利用しています.
そのために,位相空間$(X,\mathcal{O}(X))$の元$x \in X$の開近傍全体を$\mathcal{O}_{x}(X)$と書きます.
$(X,\mathcal{O}(X))$を位相空間,$Y \subset X,x,x_{n} \in X(n \in \mathbb{N})$を取る.
(1)$x$は$Y$の内点$\iff \exists U \in \mathcal{O}_{x}(X) \; s.t. \; U \subset Y.$
(2)$x$は$Y$の触点$\iff \exists U \in \mathcal{O}_{x}(X) \; s.t. \; U \cap Y \neq \emptyset.$
(3)$\lim_{n\to \infty}x_{n}=x \iff \forall U \in \mathcal{O}_{x}(X)\exists N\in \mathbb{N} \; s.t. \; n\geq N \Rightarrow x_{n} \in U.$
(1),(2),(3)に対し,$\Rightarrow$は含まれるため明らかである.
よって$\Leftarrow$を示す.
任意の$V \in \mathfrak{N}_{x}$を取る.
このとき,ある$U \in \mathcal{O}_{x}(X)$により$x \in U \subset V$が成り立つ.
$(1)$は仮定で存在する開近傍から従う.
$(2)$ 仮定から$U \cap Y\neq \emptyset$のため,$\emptyset \neq U \cap Y \subset V \subset Y$となる.
従って,$x$は$Y$の触点である.
$(3)$ 仮定から,ある$N \in \mathbb{N}$に対し$n\geq N$ならば$x_{n} \in U \subset V$が成り立つ.
任意の$V \in \mathfrak{N}_{x}$ごとに開集合を取り,
同様の議論を用いることで任意の近傍$V$に対して
$n\geq N$ならば$x_{n} \in V$となる
$N\in \mathbb{N}$が構成できる.
以上から,$\lim_{n\to \infty}x_{n}=x$となる.
$\square$
ここから,内点と触点で定義した内部と閉包も開集合による特徴づけが可能ということになります.
また,命題$2$からわかるように位相空間$X$と$x \in X$に対し次が言えそうです.
- 命題$P$に対し,「$\forall U \in \mathcal{O}_{x}(X)(P(U))\Rightarrow \forall V \in \mathcal{N}_{x}(P(V))$」である.
内点も触点も極限も,共通部分や包含など近傍と含んでいる開集合の包含関係を保ったまま議論できるので同値とできました.
つまり,次の各元で連続であることも開近傍で十分となります.
位相空間$(X,\mathcal{O}(X)),(Y,\mathcal{O}(Y))$および写像$f:X\to Y$を取る.
$f$は$x \in X$で連続$\overset{def}{\iff} \forall U \in \mathfrak{N}_{f(x)}(f^{-1}(U) \in \mathfrak{N}_{x}).$
特に次が成り立つ.
$f$は$x \in X$で連続$\iff \forall U \in \mathcal{O}_{f(x)}(Y)(f^{-1}(U) \in \mathcal{O}_{x}(X)).$
$f$が$x \in X$で連続の場合は,開近傍の主張は明らかである.
よって任意の$U \in \mathcal{O}_{f(x)}(Y)$に対し,
$f^{-1}(U) \in \mathcal{O}_{x}(X)$を仮定する.
任意の$U \in \mathfrak{N}_{f(x)}$に対し,ある$V \in \mathfrak{N}_{f(x)}$で$f(x) \in V \subset U$となる.
$f^{-1}(V) \in \mathcal{O}_{x}(X)$のため,
x \in f^{-1}(V) \subset f^{-1}(U)$から$f^{-1}(U) \in \mathfrak{N}_{x}$が得られる.
以上から,$f$は$x \in X$で連続となる.
$\square$
このように,位相空間の近傍を利用した主要な定義たちは開近傍に置き換えてよいといえます.
おわりに
ずっと近傍・開近傍の表記ゆれが気になって,今回ちゃんと文章化しました.
実際は,単純な話だったので初学当時の理解力がなかったんだと痛感しました…
以上,ケンけんでした.