こんにちは!ケンけんです。
今回は、Zornの補題による極大元の問題を考えます。
キーワード:極大元
必要知識:Zornの補題
Zornの補題
まずは、Zornの補題を復習します。
$U$:普遍集合 $X \subset U$
$(X, \leq )$:半順序集合
任意の全順序部分集合$S \subset X$は$X$上に上界を持つ $\Rightarrow$ $X$は極大元を持つ
極大元は、常に半順序集合に存在するかはわかりませんが、$X$上に上界が存在すれば必ず極大元を持つと言う強力な主張です。「選択公理」、「整列可能性定理」と同値となることから、必要・不要で論争が起こる問題です。補題の仮定を満たす半順序集合は「整列集合」とも呼ばれます。
今回はこれを認めて次のことを考えます。
$U$:普遍集合 $X \subset U$
$(X, \leq )$:整列集合
- $\forall x \in X, \exists a \in X((a:極大元) \wedge (a \leq a))$
つまり、整列集合では、任意の元ごとに順序関係を持つ極大元が存在することを主張しています。
証明
任意の元$x \in X$を取り$Y=\{y \in X|x \leq y\} \subset X$を考える。
この$Y$が極大元を持つことを示せば十分である。
任意の全順序部分集合$S \subset Y \subset X$をとる。
$X$は整列集合より、$S$は$X$上に上界を持つ。
従って、任意の$y \in S$について「$y \leq a$」とする上界$a \in X$が取れる。
$x \leq y$より推移律から「$x \leq a$」となる。
従って、$a \in Y$となり$a$は$Y$上の上界でもある。
従って、$Y$も整列集合となりZornの補題が成立する。
よって$Y$は極大元を持つ。
以上から、極大元$a$で任意の$x \in X$について$x \leq a$とするものが存在する。
$\square$
どんなところで出てくる?
今回のこの題材を記事にするきっかけは、環論のイデアルについての話です。$R$を可換環とします。
イデアルについてZornの補題から、「極大イデアルが存在すること」が示されます。このとき、次の主張が系として言及されます。
$$任意のイデアルI \subset Rを含む極大イデアル\mathfrak{m}が存在する$$
$$\forall I \in \mathfrak{I}, \exists \mathfrak{m} \in \mathrm{Max}R(I \subset \mathfrak{m}) $$
$(\mathfrak{I}:(1_{R})以外のイデアル全体の集合,\mathrm{Max}R:極大イデアル全体の集合)$
この系の議論は、「環$R$のイデアル」と「剰余環$R/\mathfrak{m}$のイデアル」の一対一対応原理を使って証明しました。しかし、一般の整列集合を構成する場面がありこの議論が使えず証明に詰まってしまったわけです。
実際は、集合論レベルの命題だったと言うことです。これは、イデアルだけでなく部分群や部分加群にも適用できZornの補題を認める場合は先の集合の議論で説明できます。
おわりに
余りに常識なのか必要な場面で議論されず自明のように扱われる系ですが、実際に示すとなると順序関係と上界の性質をうまく組み合わせる練習問題だったと思います。
以上、ケンけんでした。
