こんにちは!ケンけんです。今回は、今自分が研究している対象を学ぶ上で必要になったtorsionに関連して局所化して保たれる加群の性質を見ていきます。
キーワード:torsion module
torsion module
まず定義を確認します。
定義1
$M$を$R$-加群として$x \in M$を取る.
$x$は$\rm{torsion}$である $\overset{def}{\iff} \exists r \in \mathrm{Reg}_{R}R \; s.t. \; rx =0_{M}$.
$T(M)=\{x \in M|xは\rm{torsion}である\}$.
$T(M)=0$のときは$M$はねじれ自由加群($\rm{torsion}$-$\rm{free \; module}$)と呼ぶ.
$T(M)=M$のときは$M$はねじれ加群($\rm{torsion \; module}$)と呼ぶ.
あんまりこの言葉は日本語で呼ぶのは好きではないですが一応。
構成から$T(M)$が$R$-torsion moduleであることはすぐにわかります。
今回の動機は、次の主張からでした。
命題2
$M$を$R$-$\rm{torsion \; module}$とする.
任意の積閉集合$S \subset R$について$S^{-1}M$は$R$-$\rm{torsion \; module}$である.
証明 命題2
任意の$m/s \in S^{-1}M$を取ると$m\in M=T(M)$よりある正則元$r$によって$rm=0_{M}$である.
従って, $r(m/s)=0/s=_{S^{-1}M}$から$S^{-1}M \subset T(S^{-1}M)$である.
逆の包含は, $T(S^{-1}M)$の定義から明らかより$S^{-1}M = T(S^{-1}M$となり$S^{-1}M$は$R$-$\rm{torsion \; module}$である.
$\square$
これは別に$R$-加群だけでなく$S^{-1}R$-加群としても成立しますが今はあまり気にする必要はありません。
今回の課題
で、ここからが自分の研究している内容でしれっと出てきたものです。
命題3
$M$を$R$-加群とする.
任意の積閉集合$S \subset R$に対して, $S^{-1}T(M)=T(S^{-1}M)$である.
(つまり、$T(-)$を取る操作と局所化は可換である.)
命題2だと実はこれが自明に成り立っています。($T(M)=M$で取り換えると成り立っている。)
証明 命題3
$m/s \in S^{-1}T(M)$を取ると, ある$R$の正則元$r$で$rm=0_{M}$となる.
従って, $r(m/s)=rm/s=0_{M}/s=0_{S^{-1}M}$から$m/s \in T(S^{-1}M)$である.
$m/s \in T(S^{-1}M)$を取ると,ある$R$の正則元$r$で$r(m/s)=rm/s=0_{M}/1_{R}$となる.
従って, ある$v \in S$によって$v(rm)=r(vm)=0_{M}$である.
よって, $vm \in T(M)$であり$m/s=vm/vs \in S^{-1}T(M)$である.
$\square$
おわりに
本当は$R$-加群$M$に対して$T(M)$を取る操作は関手になることも書こうとしたのですが、しっかり整理してから記事にしたいと思います。おそらくHom関手シリーズの方で書くかも。そのせいで、少し短い記事になってしまいました。
まさか、自分で作った対象がtorsion moduleをさらに一般化した(もしくは浮かせた)加群だったのである意味以前Matlisの本を手に取っていたのは何かの縁かと思いました。
以上、ケンけんでした。