MOD-L-5:真ん中一つ両端2つ 短完全列の情報保存

2023/11/16 更新

こんにちは!ケンけんです。今回は、加群の完全列の利用である「加群の情報保存」を取り扱います。

キーワード:完全列の情報保存

この記事では環はすべて単位的可換環とします。

短完全列の情報保存

初めは「two-out-of-three」と呼ぼうとしましたが別物でしたので情報保存としました。おそらくもっともよく知られるのは次の主張でしょう。

命題1

$0 \rightarrow L \overset{f}{\rightarrow} M \overset{g}{\rightarrow} N \rightarrow 0$を$R$加群の完全列とする.

  • $M$はNoether加群である$\iff L,N$はNoether加群である,
  • $M$はArtin環である$\iff L,N$はArtin加群である,

今回はこれが本題ではないですが、一応Noether加群の方は証明はつけておきます。

完全列の性質から次が成り立つ.

  • $\mathrm{Ker}g=\mathrm{Im}f$
  • $f$は単射
  • $g$は全射

$M$がNoether加群と仮定すると昇鎖条件を満たす.

任意の$N$の昇鎖$\{N_{i}\}$を$M$に引き戻すと$\{g^{-1}(N_{i})\}$は停留的となる.

よって, ある$N’$が存在し$l \geq N’ \Rightarrow g^{-1}(N_{l})=g^{-1}(N_{l+1})$である.

$g$が全射より$g(g^{-1}(N_{i}))=N_{i}$なので,$l \geq N’ \Rightarrow N_{l}=N_{l+1}$となり$\{N_{i}\}$も停留的である.

任意の$L$の昇鎖$\{L_{i}\}$を$M$に移すと停留的な昇鎖$\{f(L_{i})\}$が得られる.

よって, ある$N’$が存在し$l \geq N’ \Rightarrow f(L_{l})=f(L_{l+1})$である.

$f$が単射より$f^{-1}(f(L_{i}))=L_{i}$なので, $l \geq N’ \Rightarrow L_{l}=L_{l+1}$となり$\{L_{i}\}$も停留的である.

以上より, $L,N$はNoether加群である.

逆に$L,N$をNoether加群とする.

このとき, 任意の$M$の昇鎖$\{M_{i}\}$から$L$での停留的な昇鎖$\{f^{-1}(M_{i})\}$,

$N$へ移すとNでの停留的な昇鎖$\{g(M_{i})\}$が得られる.

停留的であることから次のようなある$m,n \in \mathbb{N}$が存在する.

  • $l \geq m \Rightarrow f^{-1}(M_{l})=f^{-1}(M_{l+1})$
  • $l \geq n \Rightarrow g(M_{l})=g(M_{l+1})$

$N’=\max\{m,n\}, l \geq N’$のとき, $f^{-1}(M_{l})=f^{-1}(M_{l+1}),g(M_{l})=g(M_{l+1})$である.

今, $x \in M_{l+1}$を取ると, $g(x) \in g(M_{l+1})=g(M_{l})$である.

従って, ある$m \in M_{l}$によって$g(x)=g(m)$となり$x-m \in \mathrm{Ker}g=\mathrm{Im}f$である.

よって, ある$k \in L$で$x-m =f(k)$と表され, $x-m \in M_{l+1}$から$k \in f^{-1}(M_{l+1})=f^{-1}(M_{l})$である.

従って, $x-m=f(k)=n \in M_{l}$から$x=m+n \in M_{l}$となる.

$l \geq N’$のとき, $M_{l}=M_{l+1}$であるため$\{M_{i}\}$は停留的である.

以上より, $M$はNoether加群である.

$\square$

$M$からの場合は、簡単かと思いきや完全列の性質から$f,g$の単射・全射性を利用しています。逆に、$L,N$からの場合は$M$の完全性を利用しています。この証明から、短完全列について次のような発想があると言えそうです。

  • 隣接する加群については短完全による単射性と全射性を利用
  • 真ん中の加群についてはその加群での完全性を利用

この2つは短完全列だから考えられます。完全列の分解で登場する短完全列ですが、一般の完全列並に短完全列を頻繁に考えるのも納得です。

そして、この「真ん中の加群と隣接する2つの加群が互いに満たしあう性質」はとても便利です。例えば、真ん中に知っている加群を置き、完全列をなすように隣接する2つの加群を取れば調べずとも勝手に真ん中の加群の性質が成り立つからです。完全列の一つの利用先ですね。

本題

では本題(ここからが主題)ですが、この記事群MOD-Lでは既に「torison」「divisible」「torsion-free」の3種類の加群を取り上げています。これらはこの性質を満たすのでしょうか?

課題2

$0 \rightarrow L \overset{f}{\rightarrow} M \overset{g}{\rightarrow} N \rightarrow 0$を$R$加群の完全列とする.

  1. $M$は$\rm{torsion}$である$\iff$ $L,N$は$\rm{torsion}$である,
  2. $M$は$\rm{divisible}$である$\iff$ $L,N$は$\rm{divisible}$である,
  3. $M$は$\rm{torsion}$-$\rm{free}$である$\iff$ $L,N$は$\rm{torsion}$-$\rm{free}$である.

証明に出てくる$t(M)$は次のような集合で$M$の部分加群となります。

$$t(M)=\{x \in M| \exists r \in \mathrm{Reg}_{R}R \; s.t. \; rx=0_{M}\}$$

$M$を$\rm{torsion \; module}$として$L \subset t(L),N \subset t(N)$を示す.

このとき, $l \in L$について$f(l) \in M$からある正則元$r$によって$f(rl)=rf(l)=0_{M}$である.

$rl \in \mathrm{Ker}f$と$f$の単射性から, $rl=0_{L}$である.

従って, $l \in t(L)$より$L \subset t(L)$である.

$n \in N$について$g$の全射性からある$m \in M$で$n=g(m)$である.

ある正則元$r$で$rm =0_{M}$より$rn=rg(m)=g(0_{M})=0_{N}$である.

従って, $n \in t(N)$より$N \subset t(N)$である.

逆に$L,N$を$\rm{torsion \; module}$として$M \subset t(M)$を示す.

任意の$m \in M$について, ある正則元$r$によって$g(rm)=rg(m)=0_{N}$である.

従って, $rm \in \mathrm{Ker}g=\mathrm{Im}f$から, ある$l \in L$によって$rm=f(l)$である.

$l$はある正則元$t$により$tl=0_{L}$のため, $(tr)m=t(rm)=tf(l)=f(tl)=0_{M}$である.

$tr$は$R$の正則元より, $m \in t(M)$である.

以上から, $M \subset t(M)$である.

$\square$

torsionの場合も、隣接する加群については全射性・単射性を、真ん中の加群についてはその加群での完全性を利用していますね。先ほどの考察は正しいそうです。

さて本当はtorsion-freeとdivisibleについても示そうと思いましたが、torsionのように普通に示そうとすると大変なので次の記事で必要な補題を示しその結果として説明しようと思います。

(どちらも右から左しか成り立ちませんでした!反例あり)

なので今回はカット!!

おわりに

今回は、わたしがtorsion moduleを調べていた過程で気になった性質でした。実際には、特定の加群で剰余を取った加群でのtorsion moduleが完全列をなすのか?という問題ですが。

図:今考えている可換図式(横の列は短完全列です。)

この後$P$の$L,M,N$への像でそれぞれ剰余加群を取ってそれらが短完全列をなすため、剰余加群の間で課題2のtorsionについて調べられるわけです。

そのためには、普通に場合を調べないといけないのでその結果この記事が生まれました。完全列の性質とその証明の要点を確認するいい機会になったと思います。

それでは、次回のMOD-L「five Lemma」でまた。ケンけんでした。

続編出ました!

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