FIELD-L-1:添加された体 Q(√d)(その1)

こんにちは!ケンけんです。今回は体の拡大で単純な平方根を添加された体について書いていきます。

キーワード:$\mathbb{Q}(\sqrt{d})$の表示

必要知識:体の定義・体の拡大・添加された体

目標

今回の目標は次のことです。

問題

$\mathbb{R}/\mathbb{Q}$;体の拡大 $d \in \mathbb{Z}$;非平方数

$\mathbb{Q}(\sqrt{d})=\{a+b \sqrt{d}|a , b \in \mathbb{Q}\} =\mathbb{Q}[\sqrt{d}]$

$\mathbb{Q}(\sqrt{d})$は単拡大で、$\{1,\sqrt{d}\}$を基底とする$\mathbb{Q}$ベクトル空間と言えます。基本的に、右側の書き方が便利なのでよく使われますが、その間の証明はあまりしっかりせず定義として書いている本もあります。そこを調べることが今回の目的です。

添加された体

添加された体とは次のような定義でした。

定義

$L/K$;体の拡大 $S \subset L$ $\alpha \in L$

$K(S)= \mathrm{min} \{K’;体|(K \subset K’) \wedge (S \subset K’)\}= \cap_{K \cup S \subset K’;体} K’$

$K(S)$;$K$に$S$の元を添加した体

$K(\{\alpha\})=K(\alpha)$

添加された体の定義を考えると問題の$=$がすぐにわかることではないです。また、前提に$$\{a+b \sqrt{d}|a , b \in \mathbb{Q}\}$$が体であることが必要です。

補題

$\mathbb{Q}[\sqrt{d}]=\{a+b \sqrt{d}|a , b \in \mathbb{Q}\}$は体

証明 補題

$\mathbb{Q}[\sqrt{d}]$は単位的可換環である。

従って、$\mathbb{Q}[\sqrt{d}] \backslash \{0\}=(\mathbb{Q}[\sqrt{d}])^{\times}$を示せばよい。

$(\mathbb{Q}[\sqrt{d}])^{\times} \subset \mathbb{Q}[\sqrt{d}] \backslash \{0\}$は明らかより逆を示す。

$a+b \sqrt{d} \in \mathbb{Q}[\sqrt{d}] \backslash \{0\}$を取ると、

$(a+b \sqrt{d})^{-1}=\frac{1}{a^2-b^{2}d}(a-b \sqrt{d})$が考えられるため、$a^2-b^{2}d=0$を仮定する。

$a^2-b^{2}d=(a+b \sqrt{d})(a-b \sqrt{d})=0$と$a+b \sqrt{d}\neq 0$から$a=b\sqrt{d}$である。

従って、$\sqrt{d}=\frac{a}{b} \in \mathbb{Q}$となり矛盾する。

従って、$a^2-b^{2}d \neq 0$。

$a+b \sqrt{d}$は逆元を持つため、$a+b \sqrt{d} \in (\mathbb{Q}[\sqrt{d}])^{\times}$

$\square$

これで、準備ができました。証明方法はいろいろありますが、今回は集合的な証明をします。

証明

問題と離れてしまったため再掲します。

問題

$\mathbb{R}/\mathbb{Q}$;体の拡大 $d \in \mathbb{Z}$;非平方数

$\mathbb{Q}(\sqrt{d})=\{a+b \sqrt{d}|a , b \in \mathbb{Q}\} =\mathbb{Q}[\sqrt{d}]$

証明

$\mathbb{Q}(\sqrt{d}) \subset \mathbb{Q}[\sqrt{d}]$について

$\mathbb{Q} \subset \mathbb{Q}[\sqrt{d}]$と$\sqrt{d} \in \mathbb{Q}[\sqrt{d}]$より、$\mathbb{Q}[\sqrt{d}] \in \{K’;体|(\mathbb{Q} \subset K’) \wedge (\sqrt{d} \in K’)\}$。

$\mathbb{Q}(\sqrt{d})$の最小性から$\mathbb{Q}(\sqrt{d}) \subset \mathbb{Q}[\sqrt{d}]$。

$\mathbb{Q}[\sqrt{d}] \subset \mathbb{Q}(\sqrt{d}) $について、

ある$K \in \{K’;体|(\mathbb{Q} \subset K’) \wedge (\sqrt{d} \in K’)\}$について$x=a+b\sqrt{d} \in \mathbb{Q}[\sqrt{d}]\backslash K$が取れると仮定する。

このとき、$a,\sqrt{d} \in K$より$x \in K$となり矛盾する。

従って、すべての$K \in \{K’;体|(\mathbb{Q} \subset K’) \wedge (\sqrt{d} \in K’)\}$について、$\mathbb{Q}[\sqrt{d}] \subset K$。

以上から、 $\mathbb{Q}[\sqrt{d}] \subset \cap_{\mathbb{Q} \cup \{\sqrt{d}\} \subset K’;体} K’ = \mathbb{Q}(\sqrt{d})$である。

$\square$

全体通して、添加された体の最小性を利用しています。

おわりに

実は大抵の本では、別の補題を用いて主題を証明しています。それはまた別の機会にします。示した状況はかなり限定的ですが、実際に計算する場合は、$\mathbb{Q}$や素体$\mathbb{F}_{p}$に添加した体を考えることが多いので特殊なケースはその都度示せばいいと思います。

以上、ケンけんでした。

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