こんにちは!ケンけんです.
今回は,部分加群による内部直和を定義し,
線形独立性の特徴づけを行っていきます.
$R$:単位的可換環 $M$:$R$加群 $S \subset M$
$\{M_{i}\}_{i \in I}$:$M$の$R$部分加群族
写像$f:X \to X$に対し,$f^{n}$は$f$を$n$回合成した写像とする.
命題 兼 定義
一般の直和はこちらで取り上げたもので,
特別な直積集合らしき加群でした.
内部直和とは,直和と同型で部分加群の和を指します.
次の2条件を仮定する.
(1)$M=\sum_{i \in I}M_{i}$,
(2)任意の$i \in I$に対し,$M_{i} \cap (\sum_{j \neq i}M_{j})=0$.
このとき,$M \cong \bigoplus_{i \in I}M_{i}$である.
このとき,$M$を$\{M_{i}\}$の内部直和($\rm{internal \; direct \; sum}$)
$\phi:\bigoplus_{i \in I}M_{i} \to M((m_{i}) \mapsto \sum_{i}m_{i})$と定義する.
$\bigoplus_{i \in I}M_{i}$の元は有限個の$i$を除き$m_{i}=0$のため,$\sum_{i}m_{i} \in M$である.
従って$\phi$はwell-definedである.
また加法及びスカラー倍は$\bigoplus_{i \in I}M_{i}$の成分ごとの演算から導かれる.
$(m_{i}) \in \mathrm{Ker}\phi$に対し,$\sum_{i}x_{i}=0$が成り立つ.
任意の$i$で$m_{i}=\sum_{j \neq i}(-x_{j}) \in M_{i} \cap (\sum_{j \neq i}M_{j})=0$である.
従って$(m_{i})=0$から,$\mathrm{Ker}\phi=0$となり$\phi$は単射である.
任意の$m= \sum_{i}m_{i} \in \sum_{i \in I}M_{i}$を取る.
今$x_{i}=(m_{i}) \in \bigoplus_{i}M_{i}$を$M_{i}$の成分を$m_{i}$,
それ以外の成分を$0_{M}$とする元を取る.
このとき,$\sum_{i}m_{i}=\sum_{i}\phi(x_{i})=\phi(\sum_{i}x_{i})$となり$\phi$は全射である.
以上から$\phi$は同型写像である.
$\square$
この性質は線形代数において,
線形独立性と基底を取り扱う際に自然と仮定されています.
少し例を挙げてみましょう.
$\mathrm{End}_{R}(M)=\mathrm{Hom}_{R}(M,M)$とする.
$p \in \mathrm{End}_{R}(M)$に対し,$p^{n}=p(n \in \mathrm{N})$を仮定する.
このとき,$M$は$\{\mathrm{Ker}p,\mathrm{Im}p^{n-1}\}$の内部直和である.
$m \in M$に対し,$m=m-p^{n-1}(m)+p^{n-1}(m) \in \mathrm{Ker}p + \mathrm{Im}p^{n-1}$である.
従って$M=\mathrm{Ker}p + \mathrm{Im}p^{n-1}$である.
任意の$m \in \mathrm{Ker}p \cap \mathrm{Im}p^{n-1}$を取る.
このときある$l \in M$に対し,$p^{n-1}(l)=m$である.
また$p(m)=0$より,$p(n)=p^{n}(n)=p(m)=0$である.
従って$m=p^{n-1}(n)=0$のため,$\mathrm{Ker}p \cap \mathrm{Im}p^{n-1}=0$である.
以上から$M$は$\{\mathrm{Ker}p,\mathrm{Im}p^{n-1}\}$の内部直和である.
$\square$
これは$p$の像として零化される元と,
何度像を取っても零化されない元で2分割できたことになります.
内部直和の利用ケースとしては,このような性質が異なる部分加群で
重複なく分けて表現する際に頻繁に利用します.
(線形代数でも発想は同じ)
線形独立性の特徴づけ
線形独立な集合で生成された部分加群は,
線形代数の直和の定義から内部直和によって特徴づけられます.
まず線形代数学での直和定義を見てみます.
$V_{1},\ldots, V_{n}$:ベクトル空間
次の条件を満たすとき,$V_{1}+ \cdots +V_{n}$は直和と呼ぶ.
任意の$v_{i} \in V_{i}(i=1,\ldots, n)$に対し,$\sum_{i=1}^{n}v_{i}=0$ならば$v_{1}=\cdots =v_{n}=0$である.
線形代数においても,内部直和の定義と同値であることは証明されます.
それは環上の加群においても同様です.
$M=\sum_{i \in I}M_{i}$に対し,以下互いに同値である.
(1)$M$は$\{M_{i}\}$の内部直和である,
(2)任意の$m_{j} \in M_{i_{j}}(j=1,\ldots ,n)$に対し,$\sum_{j}m_{j}=0_{M}$ならば$m_{1}=\cdots = m_{n}=0_{M}$である.
(1)$\Rightarrow$(2)
任意の$j$に対し,$m_{j} \in M_{i_{j}}$を取り$\sum_{j}m_{j}=0$を仮定する.
各$i$に対し$m_{i}=\sum_{j \neq i}(-m_{j}) \in M_{i_{j}} \cap (\sum_{k \neq j}M_{i_{k}})$である.
$M$は内部直和のため,$M_{i_{j}} \cap (\sum_{j \neq i}M_{j})=0$であり$m_{i}=0$である.
任意の$i$で成りたつため,$m_{1}=\cdots =m_{n}=0_{M}$となる.
(2)$\Rightarrow$(1)
任意の$j_{1},\ldots ,j_{n} \in I$に対し,$m \in M_{i_{j}} \cap (\sum_{k \neq j}M_{i_{k}})$を取る.
このとき,次のように表示できる.
$$m=m_{j}=\sum_{k \neq j}m_{k}(m_{j} \in M_{i_{j}}).$$
$m_{j}+\sum_{k \neq j}(-m_{k})=0_{M}$より(2)から,
$m_{j}=m_{k}=0(k \neq j)$である.
従って$m=0$であり$m \in M_{i_{j}} \cap (\sum_{k \neq j}M_{i_{k}})=0$である.
以上から$M$は$\{M_{i}\}$の内部直和である.
$\square$
$S =\{s_{i}|i \in I\}\subset M$を線形独立な集合とする.
このとき$(S)$は$\{Rs_{i}\}_{i \in I}$の内部直和である.
$(S)=\sum_{i}Rs_{i}$より,$\{Rs_{i}\}_{i \in I}$は$(S)の部分加群族である.
任意の$j=1,\ldots, n$に対し,$r_{i_{j}} \in R$を取る.
今$\sum_{j}r_{i_{j}}m_{i_{j}}=0$を仮定する.
$s_{j_{1}},\ldots, s_{j_{n}}$は$R$上線形独立より,$r_{i_{1}}=\cdots =r_{i_{n}}=0$となる.
従って各$j$で$r_{i_{j}}s_{i_{j}}=0$となる.
以上から命題 MOD1-7′-4より,$(S)$は$\{Rs_{i}\}$の内部直和である.
$\square$
おわりに
線形代数での直和と同じ作法が環上の加群論でも可能であることを整理しました.
今後作用させる環の可換/非可換にかかわらず,
扱う加群を内部直和で分解することが何度か登場する.
(余談:例で挙げた冪等な線形写像は大学院入試でしれっと出されていたり)
以上,ケンけんでした.
参考文献
今回採用した直和の定義
- 竹山美宏, ベクトル空間, 日本評論社
内部直和を元の表示の一意性で定義した書籍
- 斎藤正彦, 線形代数入門, 東京大学出版
