こんにちは!ケンけんです。
1-5,1-6と素イデアル繋がりでしたが今回は極大の逆の極小性を取り扱います。
キーワード: 極小素イデアル( minimal prime ideal )
この記事では、環はすべて単位的可換環とします。
実は当たり前ではない極小性
すべての部分集合の共通部分を取れば、自然と最小になります。
実際に最小の部分集合は空集合$\emptyset$ですし。
しかし、空集合ではないものを探すと部分集合で最小となると存在が怪しいです。
なので、極小な部分集合を考えるのが妥当だといえます。
順序関係は増大($\subset$など)から減少($\supset$など)にすることで極小元は極大元として扱えます。
従って、整列集合なら極大元($=$極小元)が存在します。
順序関係の主張の多くが極大性のみなのは、逆の順序関係で同じ議論ができるからです。
そして、全順序部分集合の上界(実際は下界)の作り方は先の共通部分になります。
素イデアルにならない場合
極小元を考える方針と妥当性がわかりました。
代数系では、ただの極小だけではなく代数構造(演算や定義)も確認する必要があります。
先ほど挙げたように、下界を作るためには共通部分を取れば十分です。
しかし、共通部分はイデアルは保っても素イデアルは保ちません。
素イデアルの記事で素数と素イデアルの同値命題を個別で取り上げました。
そこから, $(6)$は素イデアルにならないことがわかります。
つまり、一般に素イデアルの共通部分は素イデアルになりません。
しかし、全順序な素イデアルの集合だと共通部分(加えて和集合)で素イデアルになります。
(1)極大イデアルの存在証明と同様の議論から, $P$は真のイデアルである.
従って, 素イデアルであることを示せば十分である.
任意の$x,y \in R$で$xy \in P$を仮定する.
このとき, ある$i$で$xy \in P_{i}$より$x \in P_{i} \subset P$または$y \in P_{i} \subset P$である.
従って, $P \in \mathrm{Spec}R$である.
(2)共通部分がイデアルであることは明らかである.
従って, 素イデアルであることを示せば十分である.
任意の$x,y \in R$で$x,y \notin Q$を仮定する.
このとき, ある$i,j \in I$で$x \notin P_{i},y \notin P_{j}$が成り立つ.
ここで, $\{P_{i}\}$ は全順序部分集合より, $P_{i} \subset P_{j}$または$P_{j} \subset P_{i}$が成り立つ.
$P_{i} \subset P_{j}$のとき, $y \notin P_{i}$より$xy \notin P_{i}$である.
従って, $xy \notin Q$から$Q$は素イデアルである.
$P_{j} \subset P_{i}$のとき, 同様に$xy \notin P_{j}$が導けるため$xy \notin Q$である.
よって, $Q$は素イデアルである.
$\square$
(2)の方では、素イデアルの定義の対偶「$x, y \notin P \Rightarrow xy \notin P$」を利用しています。
今回はこの(2)を利用して次の極小素イデアルの存在を示していきます。
極小素イデアルの存在
まずは明確に定義してしまいます。
$\mathrm{Spec}R$を$\supset$による半順序集合とみなす.
(1)$\supset$について極大元が存在することを示せば十分である.
よって, $\mathrm{Spec}R$が$\supset$で整列集合であることを示す.
任意の全順序部分集合$S=\{P_{\lambda}\}_{\lambda \in \Lambda} \subset \mathrm{Spec}R$を取り$p=\bigcap_{\lambda \in \Lambda}P_{\lambda}$とおく.
命題1-5′-3から, $P$は素イデアルである.
また, 任意の$P_{\lambda} \in S$について$P_{\lambda} \supset P$である.
従って, $P$は$\supset$による$S$の上界である.
以上から, $\mathrm{Spec}R$は整列集合である.
(2)この記事の問題と同じ手法より省略.
$\square$
包含関係を変えたことで「~含むイデアル」から「~に含まれるイデアル」と変わっています。
おわりに
すぐには必要性が感じませんが、各所に現れるのでここで押さえておくと後々楽になります。
しれっと共通部分の素イデアルについても反例と示しておきました。
以上、ケンけんでした。