こんにちは!ケンけんです。
今回は、素イデアルの中でも重要な極大イデアルを取り扱います。
この記事で挙げたZornの補題を使います。
キーワード:極大イデアル・素イデアル
この記事では、環はすべて単位的可換環とします。
定義 極大イデアル
極大と名の付くようにこのイデアルは、真のイデアルの集合族の極大元です。
なので今回は、定義からしていきます。
これも、書籍ではよく$\mathfrak{m}$(ドイツ文字)で書かれます。
半順序集合では、極大元が存在するとは限りません。
しかし、Zornの補題を認めることで必ず存在することを証明できます。
$\Sigma$を包含関係による真のイデアル全体の半順序集合とする.
Zornの補題を用いるためには, $\Sigma$が整列集合であることを示せば十分である.
よって, 任意の全順序部分集合$S \subset \Sigma$が$\Sigma$の中で上界を持つことを示す.
$S=\{I_{\lambda} \subset \Sigma|\lambda \in \Lambda\}$と表し, $I=\bigcup_{\lambda \in \Lambda}I_{\lambda}$を取る.
1.$I \in \Sigma$について, $I$が真のイデアルであることを示す.
イデアルは空集合ではないため, 各$\lambda$で$\emptyset \neq I_{\lambda} \subset I$である.
任意の$x,y \in I$と$r \in R$を取ると, ある$\lambda, \lambda’$で$x \in I_{\lambda}, y \in I_{\lambda ‘}$である.
ここで, $S$は全順序より$I_{\lambda} \subset I_{\lambda ‘}$または$I_{\lambda ‘} \subsetneq I_{\lambda}$である.
従って, $x+y \in I_{\lambda}$または$x+y \in I_{\lambda ‘}$より$x+y \in I$である.
また, $rx \in I_{\lambda} \subset I$より$I$はイデアルである.
各$\lambda$で$1_{R} \notin I_{\lambda}$より$1_{R} \notin I$である.
よって, $I \in \Sigma$である.
2.$I$が$\Sigma$の中で$S$の上界であることは, 各$\lambda$で$I_{\lambda} \subset I \in \Sigma$より成り立つ.
以上より, $\Sigma$は整列集合でありZornの補題から$R$は極大イデアルを持つ.
$\square$
また、この記事の問題をイデアルに適用することで次がわかります。
証明すべきことは集合の問題なので、リンク先の証明をそのまま使えます。
よく利用する議論
さて、元の極大性は演算を持つ代数系では重要な使い方が存在します。
初めの定義は、真のイデアルの中での極大性でした。
ここで環自身も含めると、極大イデアルを含む真のイデアルは存在せず環自身になります。
つまり、定義は次のようにも書けます。
真のイデアルの部分を極大性で書き直すと、上のようになります。
ほとんどの書籍では、ほぼこちらで提示されています。
今回は、極大性の議論を前に出したかったため後から提示しました。
そして、この表現によって次の主張が成り立ちます。
任意の$x \in R \cap M^{c}$に対し, イデアル$J=M+(x)$を置く.
このとき, $x \notin M$から$M \subsetneq J \subset R$である.
$M$の極大性から, $J=R$である.
$\square$
この極大イデアル以外の元を取る操作は、時々利用されます。
その例として、素イデアルとの関係証明です。
任意の$M \in \mathrm{Max}R$を取る.
任意の$x,y \in R$に対して,「$xy \in M$かつ$x \notin M$ならば$y \in M$」を示せば十分である.
$x \notin M$より, $J=M+(x)$を取ると$J=R$である.
従って, $1_{R} \in J$より$1_{R}=m+kx$とする$m \in M, k \in R$が存在する.
$my, xy \in M$から, $y=my+k(xy) \in M$である.
$\square$
ほとんどの書籍では、この主張を一行で終わらせる方法で証明しています。
今回は、極大イデアルの特徴と考え方を挙げたいのでこちらを採用しました。
おわりに
今回は、集合論の手法が多く使用されていました。
環論の学習だけでなく、集合の利用としてもいい題材だと思います。
(ちなみに、無く群や線形空間も極大な部分集合も同様の手法で存在が示せます。)
以上、ケンけんでした。