RING-L-8:イデアル商のメモ(その2)

反例見つかった…

こんにちは!ケンけんです。今回は以前の記事で課題としていた命題の反例が見つかったのでイデアル商の記事第2弾として書いていきます。

実質この記事の続きです。

それではやってみよう。

キーワード:イデアル商

前回の課題

まずは前回の課題を振り返ります。

課題

$R$:単位的可換環 $I,J \subset R$:イデアル $J \nsubseteq I$

$(I:J)$:素イデアル(または準素イデアル)ならば$I$は素イデアル(準素イデアル)か?

前回の考察では、多項式環で成り立つ例を考えていました。が、もっと単純なものが反例でした。有理整数環$\mathbb{Z}$です。

知っておく特徴として、$\mathbb{Z}$はPID(単項イデアル整域)であることです。そして素イデアルは、$(0)$または素数$p$を生成元とするイデアル$(p)$のみであることも知られています。ここから、反例を簡単に作れました。

素イデアルの反例

$(2)=((4):(6))$について、$(2)$は素イデアルだが、$(4)$は素イデアルではない。

$(2)=((4):(6))$の証明

$(2) \subset ((4):(6))$について

任意の$x=2k \in (2) (k \in \mathbb{Z})$について$x \times 6=4(3k) \in (4)$である。

従って、$x \in ((4):(6))$である。

$((4):(6)) \subset (2)$について

任意の$x \in ((4):(6))$を取ると、$6x=4k \in (4)$とする$k \in \mathbb{Z}$が存在する。

このとき、$3x=2k$となる。

$2,3$は互いに素より$x=2l (l \in \mathbb{Z})$と表せる。

従って、$x \in (2)$である。

$\square$

めっちゃ簡単で見つけたとき笑いました。何でこんなのに気づかなかったのか…

また、準素イデアルについても反例があります。$\mathbb{Z}$の準素イデアルは、素数$p$のべき$p^n$で生成される単項イデアルです。従って、整数の例をそのままべき上に改造すれば見つかります。

準素イデアルの反例

$(4)=((12):(3))$について、$(4)$は$(2)$-準素イデアルであるが$(12)$は準素イデアルではない。

$(4)=((12):(3))$の証明は、素イデアルの場合と同様に整数の知識からすぐに示せるため省略します。

このようにして、前回与えられた命題の逆は一般に成立しないことがわかりました。書籍に$\iff$で書かれていないことは、逆が成立しない反例が意外と単純なのかもしれません。

今回の課題

さすがにこれだけでは味気ないので、イデアル商と剰余環について調べたものを挙げます。

課題

$R$:単位的可換環 $I,J \subset R$:イデアル $I \subseteq J$

  • $(I:J)/I=((\overline{0_{R}}):J/I)$
証明

$(I:J)/I \subset ((\overline{0_{R}}):J/I)$について

任意の$\overline{x} \in (I:J)/I$を取ると、任意の$j \in J$により$xj \in I$である。

従って、$\overline{xj}=\overline{0_{R}}$である。

$\overline{j} \in J/I$であり、$\overline{x} \in ((\overline{0_{R}}):J/I)$となる。

$((\overline{0_{R}}):J/I) \subset (I:J)/I$について

任意の$\overline{x} \in ((\overline{0_{R}}):J/I)$を取ると、任意の$\overline{j} \in J/I$に対して$\overline{x} \overline{j}=\overline{xj}=\overline{0_{R}}$となる。

従って、$xj \in I$である。

これは、任意の$j \in J$について$xj \in I$より$x \in (I:J)$である。

以上から、$\overline{x} \in (I:J)/I$である。

$\square$

$I \subset (I:J)$より剰余環$R/I$のイデアルとして$(I:J)/I$が取れます。すべて代表元に注目することで、証明しています。これで、剰余環のイデアルを取る操作と零化イデアルになる場合のイデアル商を取る操作は交換可能であることがわかります。

おわりに

考えてた課題がとん挫して残念でした。でもこうやって反例を探すのも研究の一つだと言えばいい経験だと言えるのでしょう。次は、局所化の場合を考えたいですね。

以上、ケンけんでした。

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