こんにちは!ケンけんです。今回はイデアルの積について少し調べたことを書いていきます。
キーワード:イデアルの積
イデアルの積
まずは、定義を確認します。
より正確には$a_{i}b_{i}(a_{i} \in I, b_{i} \in J)$で生成されるイデアルと呼ぶこともできます。
なので、教科書や参考書では添え字$i$を書かず、「有限和」とだけ書いている場合が多いです。
同じイデアル$I$の積の場合、$II=I^2$と数のべきのように記述します。
今回はそのイデアルのべきに注目します。まず、集合の比較から次のことがすぐにわかります。
命題のような「イデアルの包含関係が小さくなるような列」を、イデアルの降鎖と呼びます。
一般に、$I \subset I^2$は成り立ちません。
イデアルの元が必ずイデアルの2つの元の積で表示できるかがわからないからです。
有名な環のクラスとして、Artin環の定義の中に降鎖条件($d.c.c$)が存在します。
この中の1.では、ある$n$以降に$I^n=I^{n+1}$となります。ですが、これはあくまでArtin環の場合。一般の環の場合、イデアルのべきについて$I^n=I^{n+1}$となるのかが今回の問題です。
少なくともアルチン環の降鎖条件(アルチン環の条件1.)よりは条件が緩いので、いろいろ例が見つかりそうな気がします。
自然な降鎖に性質は?
と言ってもすぐには思いつかなかったので、今回はいろいろな制限下で考えます。
1.Artin環の場合(明らか)
降鎖条件が成立するため、この場合は既に明らかです。
2. べき零元$x$から生成される単項イデアル(2023/12/8 追加)
べき零元はある整数$n>0$によって$x^n=0$が成り立つ元でした。
従って、$I^n=(x^n)=(0)$となるためこの$n$以降のべきはすべて零イデアルとなっています。
これに関連して「冪等元$x$」についても似た現象が起こります。
なぜなら、$x^2=x$が成り立つため単項イデアル$I=(x)$については$I^2=I$が成り立ちます。
すると、$I^n$は帰納的に$I^n=(I^2)I^{n-2}=I^{n-1}= \cdots I$となります。
よって、この$I$は降鎖の長さが$0$となるイデアルとなっていて停留的となります。
3.有限次元環の素イデアル
別の記事でKrull次元の定義をあげました。
これは、素イデアルの狭義の降鎖($\subsetneq$)の長さでの上限です。
つまり、次元有限の場合は、素イデアルの降鎖は必ず有限の長さになり次の瞬間が必ず発生します。$$\mathfrak{p}^n=\mathfrak{p}^{n+1}$$
従って、素イデアルに限りべきの降鎖が途中で止まります。
しかし、任意のイデアルになると話が変わるのでこれも本題の解決になりそうもありません。
まずは、素イデアルの間にある一般のイデアルと次元(または素イデアルの高さ)との関係性を調べないと、次元が有限だけでは考えられないような気がします。
また、アルチン環だからと言って、極大イデアルと零イデアルの間のイデアルを直接説明できるわけではないことも問題です。
(あくまで降鎖条件が成り立つだけでその間の包含をどのように構成するかが不明)
課題
- 環のクラスと例の引き出しを増やす
- 素イデアル間のイデアルの長さはどうなるか
おわりに
まだまだ自分の引き出せる環のクラスが少なく、解決できませんでした。
しかし、特別な環のクラスを必要とせずに構成できる降鎖なので一般化は難しいにしても特性がありそうな気がします。また、イデアルのべきを使って定義されるものもいくつかあります。そのため、何かしら条件が見つかればそれらの記述が単純化されそうなので思いつき次第考えたいです。
以上、ケンけんでした。