こんにちは!ケンけんです。今回は商体が元の環を含む最小の体であることについて書いてきます。
キーワード:商体の最小性
必要知識:部分環の同一視
今回の目標 商体の最小性
商体とは、整域の全商環のことでした。整域$R$、商体$Q(R)$とします。
$R$は$Q(R)$の部分環と同一視して$R \subset Q(R)$が言えます。
($f:R \rightarrow Q(R)$は自然な準同型)
部分環の同一視はこの記事を参照。
では、同一視により環を体の中で考えられるならば、この体がどのような特徴を持っているかが気になります。今回は、$Q(R)$が$R$を含む最小の体であることです。
「~を含む最小の~」と言えば、生成される部分環がありました。ただし、整域と商体の間には包含関係$\subset$が直接ありません。同一視された$\mathrm{Im}f$を含む最小の体という意味であり、包含より弱い条件であることは重要です。
当初$R$を部分環とする体$K$は、部分集合として持つ場合だけ考えていました。しかし、単射準同型による同一視は部分集合の場合も含んでいました。部分集合$R \subset K$場合も包含写像で同様のことが言えます。よって、条件を同一視できる体すべてで取りました。
証明
課題
体論では、標数という体を分類できる不変量があります。体$K$の標数$\mathrm{ch}K$は
- $\mathrm{ch}K =0 \Rightarrow Kの最小の部分体は\mathbb{Q}$
- $\mathrm{ch}K =p$($P$は素数) $\Rightarrow Kの最小の部分体は\mathbb{Z}/p \mathbb{Z}と同型$
の2パターンしかないことがわかっています。最小の部分体は素体と呼んだりします。
整数環$\mathbb{Z}$の商体は有理数体$\mathbb{Q}$でした。従って、$\mathbb{Z}$は標数$0$側の整域だと言えます。では、次のような疑問が出てきます。
また、どんな整域も商体を取りえますが、
環論では、さまざまな道具(UFD・PID・局所性・Krull次元・Noether性・Artin性など)があります。もし、1の例を見つけた場合、環の性質を$\mathbb{Z}$と比較できるはずです。
おわりに
同一視を使った正体の特徴づけと新たな疑問についてでした。意外と大したことがない疑問かもしれませんが、いずれ解決したいです。
以上、ケンけんでした。