RING-L-1:包含がなくても部分環と見たい 部分環の同一視

こんにちは!ケンけんです。今回は、環論での部分環の同一視について書いてきます。

キーワード:部分環の同一視

必要知識:環・部分環・準同型写像の定義・準同型定理・局所化

部分環の同一視

演算などの代数的構造を保つ「同型」は、2つの対象を同じと見ることができます。

確認1

$R,T$;単位的可換環 

  • $R$を$T$と同一視できる $\overset{def}{\iff}$ $R \cong T$
  • 「$R$を$T$と同一視できる」$\iff$「$T$を$R$と同一視できる」
  1. $f \in \mathrm{Hom}(R,T)$について準同型定理から$R/\mathrm{Ker}f \cong \mathrm{Im}f \subset T$
  2. $R/\mathrm{Ker}f$は$T$の部分環$\mathrm{Im}f$と同型である。
  3. $R/\mathrm{Ker}f$は$T$の部分環$\mathrm{Im}f$と同一視できる。

単射のとき

まず、準同型写像$f$が単射の場合を考えます。

$f$が単射ならば、$\mathrm{Ker}f=\{0_{R}\}$から次のようになります。

$$R \cong R/\{0_{R}\} = R/\mathrm{Ker}f \cong \mathrm{Im}f \subset T$$

ここから、環$R$が$T$の部分環と同一視できます。

2つの環に包含関係がない場合、同型を通して包含をみなせます。

無関係な$R$を$T$上で部分環として見て、$T$の枠で議論できるわけです。

次に、直接部分集合になる場合を考えましょう。

$R \subset T$の場合は、包含写像$i:R \hookrightarrow T$が存在します。

また、$\mathrm{Im}i=R$が成り立ちます。

つまり包含関係は、部分環と同一視できることより強い条件であることがわかります。

局所化で考える

局所化は、整数環から有理数体を構成する手法の一般化です。

一般に、自然な準同型$f:R \rightarrow S^{-1}R(x \mapsto \frac{x}{1})$は単射になりません。

$R$を整域にすると、$f$は単射となります。

よって、次のように$R$を$S^{-1}R$の部分環同一視できます。

$$R \cong \mathrm{Im}f \subset S^{-1}R$$

積閉集合を$R$の非零因子全体へ極端にした局所化が、全商環$Q(R)$です。また、他の場合の局所化$S^{-1}R$を同一視により部分環として持ちます。(別の機会に)

整域のとき、全商環は体となります。この体は商体($field of fractions$)を呼びます。

(ちなみに、$Q(\mathbb{Z})=\mathbb{Q}$です。)

自然な準同型$f \in \mathrm{Hom}(R, Q(R))$は単射でです。

従って、元の環$R$は商体$Q(R)$の部分環と同一視できます。

以上から、整域の場合はとその局所化$S^{-1}R$は、自然な写像の取り方から同一視して部分環と言えそうなところですが、確実に言えるようです。

また、全商環が体同一視を通して部分環となる局所化たちはすべて整域となります。

おわりに

代数学では、同型を通した同一視により$\subset$と書いていたりします。

行間を埋める際の落とし穴になりやすく、直接包含があると勘違いすることもあります。

他者に説明する場合、ここに質問が出る場合もあるため押さえておきたいです。

以上、ケンけんでした。

早速別の記事で使用しました。

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