PST-7:連続!空間の近さ比較としての写像 連続写像

こんにちは!ケンけんです.

今回は,位相空間の比較を表す「連続写像」を取り扱います.

キーワード:連続写像

導入

位相空間論の初回導入の例で,人間関係を挙げていました.

ここから,「連続(続く)」ことを位相の言葉で考えていきます.

初回に,元の近さは「人間関係」に例えました.

ではこれに時間経過を付けてみます.

準備としてAさんの在籍する学年で1年次の集合を$X$,2年次の集合を$Y$と置きます.

(学年が変わっただけで同じものとみていいです.)

そして,写像$f:X\to Y$をそのまま対応させるものとします.

(つまりAさんをAさんに対応させます.)

相も変わらずAさんを中心にします.(当時の記事からそのまま)

  • 化学が大好きで構造式集のような本を見るのが趣味である.
  • スポーツは得意ではないが水泳とウォーキングは好きである.
  • 一時期ゲームばかりやっていたせいで目が悪い.
  • 絵を描くのが好きで美術部所属である.

この中の一つ「化学が大好き」から,「科学仲間の関係」を挙げていました.

1.現在から未来へ見る場合

では,「中学1年のときにこの集まりができた.」という情報を加えてみます.

すると1年後(中学2年次)にこの集まりが「続いているか」が考えられます.

連続 現在から未来へ

この場合,「続く」とは1年次(現在)のグループが来年度も続いている状態を表します.

また,グループ内の全員がそのまま参加し続けているとも取れます.

位相で言うと,定義域側の開集合は写像を通した像集合で開集合になることを言っています.

2.過去から現在までを見る場合

今度は,「中学2年の今も化学グループの集まりが続いている.」という情報を加えてみます.

すると集まりがいつから「続いているか」または「続けているか」が考えられます.

この場合,「続く」とは2年次(現在)の集まりが去年から続いている状態を表しています.

また,この見方でもグループ内の全員がそのまま参加し続けているとも取れます.

位相で言うと,値域側の開集合による写像を通した逆像は開集合であることを言っています.

この差は,1年差ではなく半年や1,2か月でも十分です.

このように続く状況として時間を採用しましたが,これを見て「像集合と逆像のどちらでも続くことを定義できるのでは?」と思ったはずです.

ぱっと見はどちらも同じですから.

ですが,数学における「連続」は後者を採用します.

これを英語から考えてみます.

まず「続く」と言えば「$\rm{continue}$」という動詞があります.

これは,現在形の形で既に「続く」状態があることを意味しています.

なので,現在で既に「続く」状況が発生している必要があります.

また現在も続いている状態があるので過去進行形でもなく解釈として穴がなさそうです.

ちなみに,前者の解釈だと英語では未来形に近いものになります.

そこは写像の取り方によって変わりますが穴がある時点で定義としては危ういですね.

よって,人間関係のたとえでは「連続(続く)」ことは次のように説明できました.

$$現在(値域)からみて以前(定義域)から続いている状態がある.$$

何故像集合だと困るのか?

直感的な動機付けを得たところで,数学的な動機付けもしてみます.

写像は,2つの集合の間で元を対応させるルールです.

これに,構造を比較する基準を加えると空間の比較も行えます.

  • 代数の場合  ・・・群・環・体・加群の準同型写像(演算構造の比較)
  • 位相空間の場合・・・近さ(開集合の比較)

$f:X \rightarrow Y$を写像とします.

代数学の準同型写像では,定義域と像集合での演算の比較をしています.

例:$f$が群準同型写像の場合

  • $X$の群構造が$f$を通して$Y$の元に引き継ぐ.
    • $x,y \in X$について$f(xy)=f(x)f(y) \in Y$.(定義)
      1. $y,y’ \in f(X) \Rightarrow \exists x,x’ \in X s.t. y=f(x),y’=f(x’).$
      2. $yy’=f(xx’) \in f(X).$

他には,$f(X)$での逆元も確認できます.($f(X)$は$Y$の部分群)

(単射の場合は,同型による同一視で本当に$X$を$Y$の部分群とみなせます.)

つまり,「$f(X)$の演算は$X$の演算で説明できる」ことを意味します.

位相空間の場合

位相の比較するものは近さなので,「$f(X)$の位相は$X$の位相で説明できる」となります.

つまり,$\{f(U)|U \subset X:$開集合$\}$が$f(X)$の位相となれば十分です.

想定としては,次のようになります.

  • $X$の開集合$U$について像集合$f(X)$は$Y$の開集合(開集合を開集合に)
  • $X$の位相構造が$f$を通して$Y$の開集合に引き継ぐ.
    • 共通部分 :$X$の開集合$U,V$について$f(U) \cap f(V)=f(U \cap V).$
    • 和集合  :$X$の開集合$U_{\lambda}(\lambda \in \Lambda)$について$f(\bigcup_{\lambda \in \Lambda}U_{\lambda})=\bigcup_{\lambda \in \Lambda}f(U_{\lambda}).$

つまり,$X$の位相構造が$f(X)$の位相を構成していると言えれば似た近さを持つとなります.

しかし,満たしてほしい条件で一般に成り立たないものがあります.

共通部分と和集合で,一般に次のようになります.

命題

$f:X \rightarrow Y$を写像とし,$U,V \subset X$をとる.

(1)$f(U \cap V) \subset f(U) \cap f(V).$

$f$が単射の場合,等号が成立する.

(2)$f(U \cup V) = f(U) \cup f(V).$

(集合論の話なので証明は略します.)

これより,像集合ではいつも位相を決められるとは限りません.

そこで,写像によって決まるもう一つの集合「逆像」に注目します.

像集合と同様に,$\{f^{-1}(U)|U:Y$の開集合$\}$が$f^{-1}(Y)$の位相になってほしいです.

そして逆像の場合は,先ほどダメだった共通部分も等号がいつでも成り立ちます.

命題

$f:X \rightarrow Y$を写像とし,$U,V \subset X$をとる.

(1)$f^{-1}(U \cap V) = f^{-1}(U) \cap f^{-1}(V).$

(2)$f^{-1}(U \cup V) = f^{-1}(U) \cup f^{-1}(V).$

このように共通部分も等号が成り立つので,$Y$から$f^{-1}(Y)$なら位相を構成できます.

(また逆像は,補集合も順序交換できるため閉集合の比較も可能になります.)

以上から,値域側から定義域側へ位相を見る方が「位相を保つ」点でもよいといえます.

定義 連続写像

それでは,定義していきます.

定義 PST6-1

$(X,\mathcal{O}(X)),(Y,\mathcal{O}(Y))$:位相空間 $f:X \rightarrow Y$:写像

$f$は連続写像$(\rm{continuous \; map}) \overset{def}{\iff} \forall U \in \mathcal{O}(Y)(f^{-1}(U) \in \mathcal{O}(X)).$

次のことは,逆像と補集合の交換からすぐにわかります.

命題 PST6-2

$(X,\mathcal{O}(X)),(Y,\mathcal{O}(Y))$を位相空間とし,

$f:X \rightarrow Y$を写像とする.

このとき,以下が互いに同値である.

(1)$f$は連続写像である.

(2)任意の閉集合$F \in \mathcal{A}(Y)$に対し,$f^{-1}(F) \in \mathcal{A}(X)$である.

また,写像の合成でも連続性は成り立ちます.

命題 PST6-3

$(X,\mathcal{O}(X)),(Y,\mathcal{O}(Y)),(Z,\mathcal{O}(Z))$を位相空間とし,

$f:X \rightarrow Y,g:Y\to Z$を連続写像とする.

このとき,$g\circ f$も連続写像である.

任意の$U \in \mathcal{O}(Z)$に対し,

$g^{-1}(U) \in \mathcal{O}(Y)$である.

また,f^{-1}(g^{-1}(U)) \in \mathcal{O}(X)$となる.

また逆像として$(g\circ f)(U)=f^{-1}(g^{-1}(U))$のため,

$g \circ f$は連続写像となる.

$\square$

おわりに

以前の位相空間論から時間が空きましたが,連続写像でした.(1年以上前…)

はじめて学習した際に,突然逆像で定義されて戸惑った覚えがあります.

ずっと使っていると当たり前になりますが,覚えるまでの動機づけになればうれしいです.

以上,ケンけんでした.

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