こんにちは!ケンけんです。
今回は、環の正則元の加群版について取り上げます。
それでいってみよう!
キーワード:M-正則
この記事では、環はすべて単位的可換環とし、加群も可換環上とします。
加群の正則元
「加群の」とついていますが、本当に環の場合の一般化になっています。
$M=R$の場合、環の正則元と一致します。
従って、環の場合と同様に$\mathrm{Reg}_{R}M$も積閉集合となります。(環の場合)
(1)任意の$m \in M$に対し, $1_{R}m=m$より$1_{R} \in \mathrm{Reg}_{R}M$である.
(2)任意の$r,t \in \mathrm{Reg}_{R}M$と$m \in M$を取る.
$rtm=r(tm)=0_{M}$を仮定すると, $M$-正則より$tm=0_{M}$.
同様に, $m=0_{M}$で$rt \in \mathrm{Reg}_{R}M$となる.
(1)から$1_{R} \in \mathrm{Reg}_{R}M$より, $\mathrm{Reg}_{R}M$は積閉集合である.
$\square$
加群で割る 同値命題
正則元は、乗法や作用で逆元のような振る舞いをしています。
この発想から、正則元は次のように特徴づけることができます。
(1)$\Rightarrow$(2)$\Rightarrow$(3)$\Rightarrow$(1)で示す.
(1)$\Rightarrow$(2)について,
任意の$M$の部分加群$N$を取る.
$N \subset (rN:_{M}r)$は$(-:_{M}-)$の定義から明らかである.
$m \in (rN:_{M}r)$を取ると, $rm \in rN$が成り立つ.
従って, ある$n \in N$で$rm=rn$である.
$r(m-n)=0$と仮定(1)から$m-n=0$である.
以上から, $m=n \in N$で$(rN:_{M}r) \subset N$である.
$(2) \Rightarrow (3)$について, (3)が(2)の一部より明らかである.
(3)$\Rightarrow$(1)について,
$m \in M$について$rm=0_{M}$を仮定する.
(3)から$\widehat{r}$が単射より, $m =0_{M}$となる.
従って, $r \in \mathrm{Reg}_{R}M$である.
$\square$
$M=R$,部分加群をイデアルに置き換えると環の場合の利用できます。
(1)$\iff$(3)は説明がある書籍だと大抵は載っていますが、(2)も時々使用します。
(定理などでわざわざ一つだけ正則元を取る場合は(2)を使っていると思ってもいいかも。)
その他の性質
同値命題で特徴付けをしましたが、(2)を使うと以前別記事で取り上げた主張も成立します。
各$n$について, $I^{n+1}=r^nI$である.
$r^n \in \mathrm{Reg}_{R}M$であるため, $(I^{n+1}:I^n)=(r^nI:(r^n))=I$となる.
$\square$
イデアル商の右側は、単項イデアルの場合は元だけ書くようになります。
(先の主張は$(I^{n+1}:r^n)$と表す。)
この主張、極大イデアルの場合は示して他の場合がわかりませんでしたが例がありましたね。
おわりに
本当はもっと書こうと思ったのですが、話を簡潔させるためにここまで。
(他に追加できそうなら更新します。)
以上、ケンけんでした。