こんにちは!ケンけんです。
ひとつ前の記事で上げた「定義イデアル」の動機づけを取り扱います。
それではいってみよう!
キーワード:定義イデアル
実質この記事の続きです。
この記事では、環はすべて単位的可換環とします。
定義イデアル 準備
一応別記事なので定義を再掲します。
また今回使用する事実を挙げておきます。
「$\Sigma_{I}$は分解の仕方に依存しない(第1一意性定理)」ことも成り立ちます。
定義イデアルの動機づけ
まず、動機となった本の説明を見てみます。
次の説明は$R$をNoether半局所環、$\mathfrak{m}$を$R$のJacobson根基としています。
$I$進位相が$\mathfrak{m}$進位相に一致するから, $\mathfrak{m}$進位相を定義するイデアルという意味である.
松村英之, 復刊 可換環論, 共立出版, p118
$I$進位相は$I$のべきで作られる減少列で線形位相を考えたものです。
確かに、$\mathfrak{m}$のべきで$I$に含まれるので位相が同じになります。
が、もっとパンチのある動機付けはないか。
そんな時、Noether環の準素イデアルについてそっくりな性質がありました。
この(3)!!「定義イデアル」の定義にそっくりですね。
つまり、Noether局所環$(R,\mathfrak{m})$では定義イデアルの準素成分はすべて$\mathfrak{m}$準素イデアルとなります。
そうすると、半局所環でも準素イデアルで説明できないかと思ったときに次の主張が示せました。
各$i$で$\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}=P_{i} \in \mathrm{Spec}R$とおく.
$\mathrm{Max}R=\{\mathfrak{m}_{1}, \ldots, \mathfrak{m}_{m}\}$とする.
$M$を$R$のJacobson根基とすると, ある$l >0$で$M^l \subset I \subset M$が成り立つ.
このとき, 次のようになる.
$\bigcap_{J=1}^m\mathfrak{m}_{j}=M=\sqrt{I}=\bigcap_{i=1}^{n}P_{i} \subset P_{i}$.
定理2より, ある$j$で$\mathfrak{m}_{j} \subset P_{i}$.
極大性から, $\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}=P_{i}=\mathfrak{m}_{j}$となる.
$\square$
しかし、逆はこのままでは成立しません。次のように個数を利用した反例を作れます。
- $\mathrm{Max}R=\{\mathfrak{m}_{1}, \ldots, \mathfrak{m}_{m}\}$とする.
- $\sqrt{\mathfrak{q}_{i}}=\mathfrak{m}_{i}(i=1, \ldots ,m-1)$となる準素イデアルを取る.
- $I=\bigcap_{i=1}^{m-1}\mathfrak{q}_{i}$は主張を満たす.
- しかし, 極大性から$I \nsubseteq \mathfrak{m}_{m}$.
- 従って, $I \nsubseteq \bigcap_{i=1}^{m}$.
- $\Rightarrow I$は定義イデアルではない.
しかし次のように改良すると晴れて同値命題を得ることができます。
$I=\bigcap_{i=1}^{n}\mathfrak{q}_{i}$を最短準素分解とする.
また,$\mathrm{Max}R=\{\mathfrak{m}_{i}|i=1, \ldots , m\}$とする.
(1)$\Rightarrow$(2)について
課題1から$\Sigma_{I} \subset \mathrm{Max}R$は成り立つため逆の包含を示せば十分である.
任意の$i$について$I \subset M \subset \mathfrak{m}_{i}$が成り立つ.
よってprime avoidanceからある$j$で$\mathfrak{q}_{j} \subset \mathfrak{m}_{i}$となる.
課題1から, $\mathfrak{q}_{j}$は$\mathfrak{m}_{i}$準素イデアルである.
よって, $\mathfrak{m}_{i} \in \Sigma_{I}$である.
$i$の任意性より, $\mathrm{Max}R \subset \Sigma_{I}$である.
(2)$\Rightarrow$(1)について
ある$l>0$で$M^l \subset I \subset M$となることを示せば十分である.
各$j$についてある$i$で$\mathfrak{q}_{j}$は$\mathfrak{m}_{i}$準素イデアルである.
定理2から, 各$j$に対し$l_{j}>0$で$\mathfrak{m}_{i}^{l_{j}} \subset \mathfrak{q}_{j} \subset \mathfrak{m}_{i}$が成り立つ.
$l=\max\{l_{j}|j=1, \ldots , n\} >0$とおくと, $\mathfrak{m}_{i}^{l} \subset \mathfrak{q}_{j} \subset \mathfrak{m}_{i}$が成り立つ.
(2)から$\bigcap_{i=1}^{m}\mathfrak{m}_{i}=M$となる.
異なる極大イデアルは互いに素より,その$l$乗したイデアルも互いに素となる.
従って, $\mathfrak{m}_{i}$の積と共通部分は一致し次の変形ができる.
$\bigcap_{i=1}^{m}\mathfrak{m}_{i}^{l}=\Pi_{i=1}^{m}\mathfrak{m}_{i}^{l}=(\Pi_{i=1}^{m}\mathfrak{m}_{i})^{l}$
$=(\bigcap_{i=1}^{m}\mathfrak{m}_{i})^{l}=M^{l}$.
以上から, $M^{l} \subset \bigcap_{j=1}^{n}\mathfrak{q}_{j} \subset M$で$I$は定義イデアルである.
$\square$
これで、Noether半局所環の場合の特徴づけができました。
おわりに
感想:とってもすっきり!!
ネーター環の性質の大切さと半局所環への理解強化になる良い題材でした。
結構いろいろ道具使ったし。
以上、ケンけんでした。
参考文献
動機となった本
- 松村英之, 復刊 可換環論, 共立出版