RING-L-15:含む素イデアル全体 Zariski閉集合

こんにちは!ケンけんです。

今回は、以前取り上げたイデアル$I$を含む素イデアル全体$\mathcal{V}(I)$について調べたことをまとめ替わりにしていきます。

それでは行ってみよう!

キーワード:Zariski閉集合 V(I)

この記事では、環はすべて単位的可換環とします。

Zariski閉集合

正式名称はないと思っていましたが、Eisenbud先生の本では名前を付けていました。

Definition. Let R be any ring. The subsets of $\mathrm{Spec}R$ of the form

$$Z(I)=\{\mathfrak{p} \rm{\; a \; prime \; ideal \; of \; R}|\mathfrak{p} \supset I\}$$

for ideals I of R are called Zariski-closed subsets.

David Eisenbud, Commutative Algebra with a View Toward Algebraic Geometry,Springer,1995 p55

表記は違いますが、$\mathcal{V}(I)$と同じ集合です。

と言うことで名前はZariski閉集合です。

なぜ閉集合なのかは本題ではないのであまり触れません。

(補足すると、次の命題1の一部から$\mathrm{Spec}R$の閉集合だと分かります。)

次節から、この$\mathcal{V}(I)$単体でどれくらいのことがわかるのかを見ていきます。

性質たち

まず、気になるとすると()内のイデアルの操作で集合はどうなるかです。

命題1

$R$を環とし, $I,J,I_{\lambda} \subset R(\lambda \in \Lambda)$をイデアルとする.

(1)$I \subset J \Rightarrow \mathcal{V}(I) \supset \mathcal{V}(J)$

(2)$\mathcal{V}(I) \supset \mathcal{V}(J) \iff I \subset \sqrt{J}$

(3)$\mathcal{V}(I)=\mathcal{V}(J) \iff \sqrt{I}=\sqrt{J}$

(4)$\mathcal{V}(I) = \mathcal{V}(\sqrt{I})$

(5)$\mathcal{V}(I) \cup \mathcal{V}(J)= \mathcal{V}(I \cap J)=\mathcal{V}(IJ)$

(6)$\bigcap_{\lambda \in \Lambda}\mathcal{V}(I_{\lambda})=\mathcal{V}(\sum_{\lambda \in \Lambda}I_{\lambda})$

(7)$\mathcal{V}(R)=\emptyset , \mathcal{V}(0)=\mathrm{Spec}R$

(5)-(7)は、$\mathrm{Spec}R$の閉集合の公理でありこれで位相を定義します。

(7)はほとんど明らかなので(1)-(6)を示します。

(1) $\mathfrak{p} \in \mathcal{V}(J)$について$I \subset J \subset \mathfrak{p}$である.

従って, $\mathcal{V}(J) \subset \mathcal{V}(I)$である.

(2)根基は$\sqrt{J}=\bigcap_{\mathfrak{p} \in \mathcal{V}(J)}\mathfrak{p} $と表せる.

従って, $I \subset \sqrt{J} \subset \mathfrak{p} \in \mathcal{V}(J) \iff \mathcal{V}(J) \subset \mathcal{V}(I)$である.

(3)$\Rightarrow$について

$\mathcal{V}(I)=\mathcal{V}(J)$より, $\sqrt{I}=\bigcap_{\mathfrak{p} \in \mathcal{V}(I)}\mathfrak{p}=\bigcap_{\mathfrak{p}’ \in \mathcal{V}(J)}\mathfrak{p}’=\sqrt{J}$である.

$\Leftarrow$について

(2)を利用すると, $I \subset \sqrt{I}=\sqrt{J}$から$\mathcal{V}(J) \subset \mathcal{V}(I)$である.

逆の包含も同様に示せる.

(4)根基を2回取ると根基に戻るため$\sqrt{I}=\sqrt{\sqrt{I}}$である.

従って, (3)から$\mathcal{V}(I)=\mathcal{V}(\sqrt{I})$である.

$\square$

(5)$IJ \subset I \cap J$より(2)から$\mathcal{V}(I \cap J) \subset \mathcal{V}(IJ)$である.

また, 各$\mathfrak{p} \in \mathcal{V}(I) \cup \mathcal{V}(J)$を取ると, $I \subset \mathfrak{p}$または$J \subset \mathfrak{p}$である.

従って, $I \cap J \subset \mathfrak{p}$より$\mathfrak{p} \in \mathcal{V}(I \cap J)$である.

よって, $\mathcal{V}(IJ) \subset \mathcal{V}(I) \cup \mathcal{V}(J)$を示せば十分である.

$\mathfrak{p} \in \mathcal{V}(IJ)$は素イデアルより, 「$IJ \subset \mathfrak{p}$ならば$I \subset \mathfrak{p}$または$J \subset \mathfrak{p}$」が成り立つ.

従って, $\mathfrak{p} \in \mathcal{V}(I) \cup \mathcal{V}(J)$である.

(6)各$\lambda$について$I_{\lambda} \subset \sum_{\lambda\in \Lambda}I_{\lambda}$より, (1)から$\mathcal{V}(\sum_{\lambda \in \Lambda}I_{\lambda}) \subset \mathcal{V}(I_{\lambda})$が成り立つ.

従って, $\mathcal{V}(\sum_{\lambda \in \Lambda}I_{\lambda}) \subset \bigcap_{\lambda \in \Lambda}\mathcal{V}(I_{\lambda})$である.

逆に, $\mathfrak{p} \in \bigcap_{\lambda \in \Lambda}\mathcal{V}(I_{\lambda})$について各$\lambda$で$I_{\lambda} \subset\mathfrak{p}$である.

以上から, $\sum_{\lambda \in \Lambda}I_{\lambda} \subset \mathfrak{p}$であり$\bigcap_{\lambda \in \Lambda}\mathcal{V}(I_{\lambda}) \subset \mathcal{V}(\sum_{\lambda \in \Lambda}I_{\lambda})$となる.

$\square$

(3)から、2つの素イデアル$\mathfrak{p},\mathfrak{q}$について次も根基の性質から成り立ちます。

$$\mathfrak{p}=\mathfrak{q} \iff \mathcal{V}(\mathfrak{p})=\mathcal{V}(\mathfrak{q})$$

$\Rightarrow$は明らかですが、$\Leftarrow$は間接的に素イデアルの一致を見れるため有用に感じます。

ちょっとした表示

この節では、ちょっとした$\mathcal{V}(I)$を使ったいろいろな表現を見ていきます。

1.極大イデアルと極小素イデアル

極大イデアルの存在で逆の包含について示すと極小素イデアルの存在を証明できます。

このとき、$\mathfrak{p} \in \mathrm{Spec}R$について次が成り立ちます。

極小素イデアル

当たり前と言えばそうですが、極大極小の定義を考えると次のようになります。

  • $\mathfrak{p}$は極小素イデアル$\iff 0 \subset \mathfrak{q} \subsetneq \mathfrak{p}$を満たす$\mathfrak{q} \in \mathrm{Spec}R$は存在しない,
  • $\mathfrak{p}$は極大イデアル$\iff \mathfrak{p}\subsetneq J \subsetneq R$を満たすイデアル$J$は存在しない.

極小の場合は、零イデアルも素イデアル(整域の場合)があり得ますが、$0$から$\mathfrak{p}$の間に素イデアルが存在しなければ十分なので$\mathcal{V}(0)$でよいことになります。

極大の方は、そのままです。

2.局所化との関係

環上の加群$M$が零加群であることは局所的性質です。
(適当な素イデアルで局所化して零加群であることと同値。)

では、零加群以外の加群で局所化した場合零加群にならない素イデアルも存在します。

この素イデアルの集合を可換環論では($\rm{support}$)と呼び次の$\mathrm{Spec}R$の部分集合です。

$$\mathrm{Supp}M=\{\mathfrak{p} \in \mathrm{Spec}R|M_{\mathfrak{p}} \neq 0\}$$

有限生成加群の場合は、この台が$\mathcal{V}(-)$で表現できます。

命題2

$M$を有限生成$R$加群とする.

  • $\mathrm{Supp}M=\mathcal{V}(\mathrm{Ann}_{R}M)$

直接と対偶どっちでも示せますが、対偶の方がわかりやすいので採用します。

$\{x_{1}, x_{2} , \ldots , x_{n}\}$を$M$の生成系とする.

$\mathfrak{p} \notin \mathrm{Supp}M$を取ると, $M_{\mathfrak{p}}=0$である.

このとき, 各$i$で$a_{i}x_{i}=0$とする$a_{i} \notin \mathfrak{p}$が存在する.

$a=a_{1}a_{2} \cdots a_{n} \notin \mathfrak{p}$について各$m \in M$で$am=0$となる.

従って, $\mathrm{Ann}_{R}M \nsubseteq \mathfrak{p}$となる.

逆は明らかなので「$M_{\mathfrak{p}}=0 \iff \mathrm{Ann}_{R}M \nsubseteq \mathfrak{p}$」が成り立つ.

以上から, 「$\mathfrak{p} \notin \mathrm{Supp}M \iff \mathfrak{p} \notin \mathcal{V}(\mathrm{Ann}_{R}M)$」が成り立つ.

$\square$

加群の台は、$\mathcal{V}(I)(I$はイデアル$)$と同時に考える場合もある特別な対象です。

おわりに

大体Zariski位相を定義するために出てきてすぐ影が薄くなってしまう$\mathcal{V}(I)$でしたが、調べると位相なしでもいろいろ性質を持っていることがわかり満足です。また、素イデアルの命題等の復習にもなりました。

以上、ケンけんでした。

参考文献

定義の名前を引用した本

David Eisenbud, Commutative Algebra with a View Toward Algebraic Geometry,Springer,1995

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