こんにちはケンけんです。今回は環の正則元の演算の性質で閉じる閉じないを例を挙げつつ見ていきます。
キーワード:非零因子(正則元)
正則元
一般には、非零因子($\rm{non\; zero \; divisor}$)と呼ばれますが私は正則元($\rm{regular \; element}$)の方がしっくりくるため使っています。読んで字のごとく零因子ではない元のことです。
紛らわしいですが、正則元は整域の定義「非零な零因子」とは関係ありません。
正則元は、零因子ではないためどんな非零な元をかけても零元$0$にはなりません。
そうすると正則元全体の集合$\mathrm{Reg}_{R}R$は、どんな構造を持っており特徴的な集合であるか気になります。実際に、これは積閉集合となっています。(つまり乗法モノイド)
任意の$x, \; y \in \mathrm{Reg}_{R}R$を取ると任意の$r \in R \backslash \{0\}$について$rx \neq 0, \; ry \neq 0$である.
今$xy$を零因子と仮定すると, ある$r \in R \backslash \{0\}$で$r(xy)=0$となる.
しかし, $rx \in R \backslash \{0\}$より$(rx)y \neq 0$であり矛盾する.
以上から, $xy \in \mathrm{Reg}_{R}R$である.
$\square$
疑問と反例
では加法はどうか?なのですが、反例があります。
このように加法に関して$\mathrm{Reg}_{R}R$は閉じていないので部分環にはなれず、乗法逆元も存在しない場合があるため積閉集合(可換モノイド)が構造としては限界となります。
可換環で反例上げようとするととりあえず$\mathbb{Z}$の剰余環を考えると結構見つかります。
他の性質
と言うわけで代数的な構造はわかりましたが、他に何か性質はないのか。と言うことで次の性質がありました。
1. と2.は, 明らかである.
3. について任意の$x \in (\mathrm{Reg}_{R}T)(\mathrm{Reg}_{T}T)$を取る.
このとき, $r \in \mathrm{Reg}_{R}T , \; t \in \mathrm{Reg}_{T}T$によって$x =rt$と表せる.
2.より, $r \in \mathrm{Reg}_{T}T$から$x=rt \in \mathrm{Reg}_{T}T$である.
4.について, 任意の$x \in \mathrm{Reg}_{R}T$を取る.
このとき, 任意の$r \in T \backslash \{0\}$に対して$rx \neq 0$である.
従って, $r \in R \backslash \{0\}$に対しても$rx \neq 0$より$x \in \mathrm{Reg}_{R}R$である.
$\square$
ここから、正則元全体について持ってくる環の大小は保つが、どの環の元で零化されないかは順序が逆になることがわかります。
おわりに
今回は、自分が正則元全体を利用しようとしていろいろ矛盾にぶつかったためメモ代わりに色々調べたことをまとめました。とりあえず結論は、$$正則元全体は環とは限らない$$だけ持って帰ってください。
以上、ケンけんでした。