こんにちは!ケンけんです。前回は命題の下で集合を定義して、2通りの書き方を見比べました。
今回は、2つの集合がいつ「同じ」だと言えるのかについて扱います。
キーワード;集合の相等
導入
今回も高校でのやり方から始めましょう。
高校の問題らしくあえて日本語で書きましたが、この二つの集合はどちらも$\{1,3,5,7,9\}$と元を書き下せます。なのですぐに同じ集合だと言えるでしょう。ですが私たちは前回書き下せない集合の例を知りました。有理数のときを考えてみましょう。有理数全体の集合は$\mathbb{Q}$で書きます。
この例でも$X$、$Y$はともに書き下せません。比較するためにはどうするか。条件の不等式から「$3 \leq x \leq 9$と$1 \leq \frac{x}{3} \leq 3$が不等式として同じだから」と理由づけられそうです。つまり、条件の述語が同じならば集合として同じと言えそうです。命題が同じであるとは、条件が全く同じ以外に「同値」がありました。
記号で書くと$X=\{x|P(x)\}$と$Y=\{x|Q(x)\}$が同じ集合であるとは、述語として$$\forall x(P(x) \iff Q(x))$$が真であることと言えそうです。そして外延的定義(命題を使った書き方)では$$x \in X \overset{def}{\iff} P(x)は真$$だったことを思い出すと、$$\forall x(x \in X \iff x \in Y)$$とが成り立ちます。ここにはギャップがあり
- 「$\iff$」の定義は「$\Rightarrow$」と「$\Leftarrow$」の組み合わせ
- 「$\Rightarrow$」と「$\Leftarrow$」の推移律(命題NST-5-6 9.)
を組み合わせることで、「$x\in X$」と「$x \in Y$」についての述語として示せます。
以上から、命題を利用した方法なら元を書き下せない集合の比較ができそうです。
集合の相等
それでは定義しましょう。
この定義は、「一方の集合($X$)の元はもう一方の集合($Y$)の元である」と読めて、書き下した集合の元をそれぞれ調べる、高校でのやり方に近いです。この定義は、導入での考察から$$XとYは相等しい \iff \forall x(P(x) \iff Q(x))$$とも言えます。従って、途中で述語を挟んでおり書き下せない場合にも対応可能です。
今後は「相等しい」では言いにくいので「一致する」や「等しい」と言います。
また、証明で二つの集合が一致することを示す時には
- 文章で証明する方法
- 命題の「$\iff$」、「$\Rightarrow$」を使って恒真命題を用いて示す方法
の2通りあります。文章で示す場合は、あらかじめ「任意の」や「ある」と主張することが必要です。恒真命題を用いる場合は「$\forall$」については書かずとも考えているものとして書かないケースが多いです。なので、参考書によっては$$X = Y \overset{def}{\iff} (x \in X \iff x \in Y)$$と定義していることがあります。(むしろこっちの方が多いです。)ただし、命題論理で考えると「$\forall$」は必要です。また、条件の述語($P(x)$)に「$\forall$」がある場合は考える必要があります。
再考
それでは、導入で考えた例を考えてみましょう。
これを確かめるには、「$\forall(x \in X \iff x \in Y)$」、より単純に変数$x$を任意として「$x \in X \iff x \in Y$」を示せばいいです。その過程で条件の不等式を満たすことを経由します。そして、不等式の性質を用いて「$3 \leq x \leq 9$」全体を$3$で割ることで「$1 \leq \frac{x}{3} \leq 3$」が得られるのでこの2つの述語は同値($\iff$)であると言えます。つまり、$$\begin{align} x \in X &\iff& 3 \leq x \leq 9 \\ &\iff& 1 \leq \frac{x}{3} \leq 3 \\ &\iff& x \in Y \end{align}$$
と「$\iff$」で結ぶことができました。従って、示したい「$x \in X \iff x \in Y$」が得られたので「$X=Y$」が示せました。
文章で説明する場合は、命題論理の記号を言語に直して「$\iff$」で結んだ部分をそれぞれ説明すればいいです。
おわりに
今回で、集合の「$=$」は命題の「$\iff$」により決定されていると言えて、集合とその元についての情報が述語として追加されているだけであるとわかるでしょう。ということは、命題で用いた記号たちについても集合の情報を被せると新しい集合が作れそうですね。次回は、この考えの下に部分集合・共通部分・和集合・補集合を定義していきます。
以上、ケンけんでした。