NST-7:変数の条件 全称記号・存在記号 

こんにちは!ケンけんです。前回は、主語を不定形にする述語を取り上げました。

今回は、述語の変数に条件を付ける「全称・存在」を扱います。

キーワード」:全称記号・存在記号

導入

述語は、言語の代名詞のような「変数」を使って真偽が決まる命題でした。では、この文字$x$の条件などを考えるとどうでしょう。前回の例で、すべての数が$Q(x)$を真にしない例外が存在していました。つまり、文字$x$の取り方をうまく制限して述語を真にできるのではないでしょうか。

例 NST-7-1

$x$;$\ldots ,0,6 \ldots$のいずれかを表す変数

$y$;$\ldots , -3,0,3,6 \ldots$のいずれかを表す変数

$P(x)$;$x$は$6$の倍数である。

$Q(x,y)$;$x \times y$は$6$の倍数である。

  1. すべての変数$x$で$P(x)$は真となる。
  2. 一部では$P(y)$が偽となるが、$P(y)$が真となる$y$も存在する。
  3. すべての変数$x,y$で$Q(x,y)$は真となる。

1.はすべての$x$で真になりますが、$y$が$3,9$などの時は偽になります。しかし、$6,12$など$P(y)$を真とする$y$が存在します。従って、真にする変数が存在することは言えそうです。

1.と3.を「すべての~」、2.を「~が存在する。」という言い回しとすると次の特徴があります。

  1. 「すべての~」
    • 変数によらず成り立つため一般性が強い
    • 「~が存在する。」も当然成り立つ。
    • 真な命題を作る場合一度はすべての場合を調べる必要がある。
  2. 「~が存在する。」
    • 一つでも見つければ真といえるため、調べるのが楽である。
    • 変数に例外を許す場合があり、「すべての~」が言えるわけではない。

そして、「すべての~」の命題が偽になる場合、例外が存在すると言いました。

例 NST-7-2

$x$;すべての整数を表す変数

述語$P(x)$;$x$は$6$の倍数である。

  1. 「すべての変数$x$で$P(x)$が真である。」は偽である。
  2. 「$P(x)$を偽にする$x$が存在する。」は真である。

「すべての$x$で成り立つ。」を否定する場合、安直に「すべての$x$で成り立たない。」とは言いかえできません。なぜなら、「一つの例外$x$」が存在するだけで「すべての$x$」では成り立っていないと言えるためです。逆に、偽になる変数$x$しかないとも言っていないので「すべての$x$で成り立たない。」が真とは言えず否定になっていません。

この考えから1.は$11,13$などの例外があり、一つでも例外があるので「すべて」ではありません。従って偽であると言えます。この否定を取ると、$$すべての変数xでP(x)が真とは限らない $$が真になります。そして、$$P(x)を真にしない変数xが存在する$$と言いかえできます。この否定文は、2.と互いに言いかえできることはすぐ言えるでしょう。従って、述語「すべての~」は否定を通して述語「~が存在する。」と結ぶことができます。

以上から、「すべての~」と「~が存在する。」を記号化すると、否定や「ならば」のような論理を述語の変数に持ち込めそうです。

定義 全称記号・存在記号

それでは記号を定義していきましょう。

定義 NST-7-3

$x$;変数 $P(x)$;述語

$\forall$;全称記号

$\exists$;存在記号

$\forall x P(x)$;「すべての変数$x$で$P(x)$が真である。」を意味する述語

$\exists x P(x)$;「$P(x)$を真とする変数$x$が存在する。」を意味する述語

$\exists ! x P(x)$;「$P(x)$を真とする変数$x$がただ一つ存在する。」を意味する述語

上のように記号を使って表現します。また、例で、$2$項関係がありましたがこの場合、記号は$\forall x \forall y$と$,$をつけずに一気に記述します。

ちなみに、$\forall$は英訳のfor all(すべての)の$A$を、$\exists$はexist(存在する)の$E$をそれぞれ反転させたものです。

存在については、一つでも存在すれば述語として真になるので、さらに制限をかけて「唯一つの変数だけ真にする述語」を考えることもできます。従って存在記号($\exists$)の後ろに「!」をつけることで真にする変数が一つしかない唯一性を意味するようにします。このたった一つしか存在しないことは、制限として強いですがよい性質なのでよく数学では登場します。

再考

それでは記号化した述語で例と否定を通した関係を見直してみましょう。

例 NST-7-4

$x$;$\ldots ,0,6 \ldots$のいずれかを表す変数

$y$;$\ldots , -3,0,3,6 \ldots$のいずれかを表す変数

$P(x)$;$x$は$6$の倍数である。

$Q(x,y)$;$x \times y$は$6$の倍数である。

  1. $\forall x P(x)$;すべての変数$x$で$P(x)$は真となる。
  2. $\exists x P(y)$;$P(y)$が真となる$y$も存在する。
  3. $\forall x \forall y Q(x,y)$;すべての変数$x,y$で$Q(x,y)$は真となる。

例の述語はこのように記述できます。日本語だとまどろっこしい文章が$\forall \exists$と書くだけで表現できるのでかなり簡略化できていますね。

否定についても見てみましょう。

例 NST-7-5

$x$;すべての整数を表す変数

述語$P(x)$;$x$は$6$の倍数である。

  1. $\forall x P(x)$;「すべての変数$x$で$P(x)$が真である。」は偽である。
  2. $\neg (\forall x P(x))$;「すべての変数$x$で$P(x)$が真とは限らない」は真である。
  3. $\exists x (\neg P(x))$「$\neg P(x)$を真にする$x$が存在する。」は真である。

2.は「$P(x)$を偽にする変数$x$が存在する。」と言いかえられ、さらに「$\neg P(x)$を真にする変数$x$が存在する。」と言いかえできます。つまり、「$\neg (\forall x P(x)) \Rightarrow \exists x (\neg P(x)) $」が真となります。逆の「ならば」も同様に言いかえできるので真になり、$$\neg (\forall x P(x)) \iff \exists x (\neg P(x))$$が恒真命題となります。以上から、全称記号と存在記号は「かつ・または」のように否定を通した裏表の関係であることがわかります。

また、省略しますが、「$\forall$」「$\exists$」は「$\wedge$」「$\vee$」と交換可能です。

  • $\forall x (P(x) \wedge Q(x)) \iff (\forall xP(x)) \wedge (\forall xQ(x))$
  • $\forall x (P(x) \vee Q(x)) \iff (\forall xP(x)) \vee (\forall xQ(x))$
  • $\exists x (P(x) \wedge Q(x)) \iff (\exists xP(x)) \wedge (\exists xQ(x))$
  • $\exists x (P(x) \wedge Q(x)) \iff (\exists xP(x)) \vee (\exists xQ(x))$

これは、変数に存在や任意の条件があっても(ー)内の命題論理だけで真偽が判定できるためです。

おわりに

今回で集合を説明するための言葉が、すべてそろいました。数学で使う論理は言語の省略であることがここまでを通してわかっていただけたでしょう。そして、今回の例で変数の取り方を記述できていないことに気づきましたか。例では、整数や$3$の倍数などを指定していましたが、それを説明する言葉がありません。実はここに「$x$は集合の元である。」という命題が加わって初めて意味を成します。

次回から、集合を定義していきます。

以上、ケンけんでした。

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