NST-6:命題を自由に 述語論理

こんにちは!ケンけんです。前回で命題論理の主要な言葉が定義できました。

今回は、集合を記すための準備である「述語論理」を扱います。

キーワード;述語論理

導入

言語では、何度も使う主語や名詞を置き換えたりするときに置き換えとして「代名詞」がありました。(あれ・それ・彼・あなたなど)これは具体的に主語を書かずともその対象を指す言葉でした。これを数学に適用すると、具体的な対象だけでなく類似する対象すべてを考えられそうです。

早速、例を考えてみましょう。

例 NST-6-1

$x$;整数

  • 命題$P$;$6$は$3$の倍数である。
  • 命題$Q$;$x$は$3$の倍数である。

$P$が真であることはすぐにわかります。しかし、$Q$の真偽はすぐにはわかりませんね。例えば、$x=3,6,9,12$などの時は真ですが、$x=2,5,11,17$などは偽です。つまり、$Q$を真にする$x$は複数個存在しています。従って$Q$を真とすると、「$6$」という数だけでなく他に真とするすべての数を$x$で表せていることになります。

主語の部分が違う沢山の命題を$Q$だけで表せており、$P$の主張は$Q$で「$x=6$」とした場合です。従って、$P$が$Q$で表現できることもわかります。

以上から、「具体的な数$6$」を「$3$の倍数の代名詞$x$」に置き換えることで$$一度にたくさんの命題を考えられる$$ことがわかります。真偽は文字$x$により決まるため、関数のように$Q$を$Q(x)$と書けるでしょう。

では、文字を複数個持つ文章はどう見れるでしょうか。

例 NST-6-2

$x,y$;整数

  • 命題$R$;$3$と$6$の和は$9$である。
  • 命題$R’$;$x$と$y$の和は$9$である。

実は、$R$は「$3 + 6 =9$」を文章で書いただけです。そしてこれは、一般の加法では真でしょう。では、$R’$の方はどうでしょうか。方程式「$x+y=9$」を意味して、解はいくつも存在します。よって、命題を満たす沢山の数を文字$x,y$で取れます。また、$R$は$R’$の「$x=3,y=6$」または「$x=6,y=3$」の場合と全く同じです。

文字を使って真偽を決める命題は、一度にたくさんの真偽を判定できて便利であることがわかります。

定義 述語論理

それでは、この文章たちを記号化しましょう。

定義 NST-6-3

$x$;変数($variable$)

$P(x)$;述語($predicate$) $\overset{def}{\iff}$ $P(x)$は変数$x$で真偽が定まる命題

$x_{1},x_{2}, \ldots ,x_{n}$;$n$個の変数

$P(x_{1})$;$x_{1}$の性質($property$)

$P(x_{1},x_{2}, \ldots ,x_{n})$;$x_{1},x_{2}, \ldots ,x_{n}$の$n$項関係($n-ary$ $relation$)

数学では、ここまで作ってきた命題論理を使って述語を考えます。なぜなら、導入の例のように具体的な数ではなく、$x$のような変数・不定元・未知数などを使って性質を探ることが主になるからです。具体的な数ではなく倍数の性質を満たす数に注目するのです。

決まった性質をもつものを文字で置き構造(四則演算や図形的性質など)を調べる分野を「代数学($algebra$)」と呼びます。なので、代数学では$Q(x)$とはいちいち書きませんが、証明はほとんど述語論理に従っています。

「性質」は、これまで例で使ってきたもので、

  • 「倍数・約数」や「素数・合成数」(変数が整数)
  • 数列や級数の「収束・発散」(変数が一つの級数「$S =\sum a_{n}$」)

などが該当します。なので、「~の性質」と書かれていたものはすべて述語です。

そして、$n$項関係とは簡単なもので四則演算が該当します。その他に、

  • ベクトルの独立(変数がベクトル)
  • 積分の線形性(変数が関数)

などが高校数学にありました。

また述語は変数に依存する「命題」なので同じ道具が述語にも適用できます。

(「ならば($\Rightarrow$)」、「かつ($\wedge$)」、「または($\vee$)」など)

命題論理と同じ議論を変数についてするだけなので省略します。

再考

それでは、導入の例を述語を使って考えていきましょう。

例 NST-6-4

$x$;整数

  • 命題$P$;$6$は$3$の倍数である。
  • 述語$Q(x)$;$x$は$3$の倍数である。

$Q(6)$について、$Q(6) \iff P$が真であることがわかる。

6-1で命題だった$Q$を述語で表現しました。そして、$x=6$の時、$P$と同じ文章になります。従って、命題論理から$Q(6)$と$P$が同値であるとわかります。

ここから、$P$は述語$Q(x)$の一つであるとわかります。

例 NST-6-5

$x,y$;整数

  • 命題$R$;$3$と$6$の和は$9$である。
  • 述語$S(x,y)$;$x$と$y$の和は$9$である。

$S(3,6),S(6,3)$について、

  1. $S(3,6) \iff R$
  2. $S(6,3) \iff R$
  3. $S(3,6) \iff S(6,3)$

が真である。

文章の一致から1.が真であることがわかります。また、整数の和は交換法則が成り立っており、「$6+3=9$」は「$3+6=9$」と同じ意味を持ちます。従って、$S(6,3)$は他二つの述語と命題として同値であると言えます。また、$3,6$の組み合わせ以外にも$R$と同値になる$x,y$が取れることもわかります。

以上から、述語の中で同値になりえる命題を持っていることがわかります。

おわりに

述語は数学らしい道具であり、これも集合を定義するための道具です。具体的には、属す・属さないを述語の真偽で決定します。命題同様、述語も様々な例が存在するので新聞やネットの記事で探して書き出してみてください。

次回は、論理編最後の話題である変数の条件「全称・存在」を取り扱います。

以上、ケンけんでした。

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