こんにちは!ケンけんです。前回は「かつ」、「または」の記号化をしました。
今回は、命題の言いかえを示す「同値命題」を扱い、常に真になる命題「恒真命題」を取り上げます。
キーワード;命題の同値 恒真命題
導入
否定・結合の記号を文章と同じ感覚で使えるように言葉を作ってきましたが、当然のように命題の文章を言いかえをしています。
具体的には、次の三つで「言いかえ」を使いました。
- 二重否定の言いかえ
- 「ならば」を使った「かつ」の文章
- 「かつ」と「ならば」の否定を通した関係
では、これら「言いかえ」は命題としてどう説明するのでしょう。
まずは「ならば」と「かつ」の文章です。
「$R \Rightarrow P \wedge Q$」と逆に、「$A$さん$B$さんどちらも引っかからないこと」から「時間内飛びきること」も説明できます。
従って、「$P \wedge Q \Rightarrow R$」が真だと言えます。
以上から「時間内飛びきること」と「$A$さん$B$さんどちらも引っかからないこと」は互いに言いかえでき、真偽も一致することがわかります。
次に、二重否定を見てみましょう。
この文章は、「$P \Rightarrow \neg(\neg P)$」を意味し真です。二値論理から、「遠回しな肯定」は「肯定」扱いなので、$\neg (\neg P)$は「$50m$を$7.5$秒以下で走り切る。」と訳します。
$\neg (\neg P)$の訳から、$\neg (\neg P)$が真の時$P$が真だとわかります。
これは、「$\neg (\neg P) \Rightarrow P$」が真であることを意味します。
以上から、$P$と$\neg (\neg P)$は同じ意味と読めて、$P$と$\neg (\neg P)$は互いに言い換えでき、真偽も一致します。
最後は前回見たド・モルガンらしき言いかえです。上と同じケースを用います。
$\neg (P \wedge Q)$は、「とも$A$さんが引っ掛かった。または$B$さんが引っかかった」と言い換えできます。従って、$(\neg P) \vee (\neg Q)$と書けて真です。
そして、「$\neg (P \wedge Q) \Rightarrow (\neg P) \vee (\neg Q)$」が真であることは、「ならば」の例を使うとわかります。逆の、「$(\neg P) \vee (\neg Q) \Rightarrow \neg (P \wedge Q)$」も同様に真であると言えます。
以上から、「$\neg (P \wedge Q)$」と「$(\neg P) \vee (\neg Q)$」は互いに言いかえでき、真偽も一致します。
いずれも、題材を変えているがどれも一度議論した言いかえである。そして、「言いかえ」をするときの共通点は、
- 言いかえる前と後で真偽が一致している
- $P$を言いかえ前の命題、$Q$を言いかえ後の命題として、「$P \Rightarrow Q$」、「$Q \Rightarrow P$」ともに真
の二点です。そして、1.は2.の事実から説明できます。つまり2.を満たす命題を、言いかえができるとしてよいことになります。
同値命題
「言いかえ」できる条件を使って命題の同値を定義します。
この同値はまさに$\overset{def}{\iff}$であり、常に真であるように強めた同値です。
この矢印と同値は高校でも出てきました。
命題「$p \Rightarrow q$」,「$q \Rightarrow p$」がともに真であるとき,
$p$は$q$であるための必要十分条件であるという。
また,このとき,$p$と$q$は同値であるともいい,「$p \iff q$」と表す。
東京書籍 NEW ACTION LEGEND 思考と戦略 数学Ⅰ+A p84
高校での同値は命題論理とさほど変わらないことがわかりますね。数学では性質を使いやすいように「言いかえ」て証明を行ってきました。例えば、倍数の言いかえがあります。
「互いに同値」は、別々の命題で「$\iff$」を考えても真であることを説明する問題文です。
(他に、「相異なる~は同値である。」といった言い方もあります。)
当たり前に見える上の性質ですが、本来定義は一つのはずで他はそこから説明できる命題です。例えば、「$1. \overset{def}{\iff}2.$」とすると、他は命題や定理扱いとなります。一番下の同値な命題は、倍数の判定法でお世話になったでしょう。そして、6.は、1.や2.を使って示したはずです。高校数学では、表立って「$\iff$」を使いませんが、実際はあらゆる性質が同値になっています。何なら方程式の式変形も同値と呼べるので、数学での「言いかえ」重要性がかわかります。
この言いかえを使った「議論の容易化」と、「直接示したい事実へ真な命題を言い換えていくこと」が数学の「証明」であると言えます。数学の主張(命題・定理)などはそのまま示そうとすると難しい場合があります。そこで、示したいことを一度論理で表現して、別の同値な命題に言い換えて示しやすくすることが証明を理解する第一歩であると言えます。
恒真命題
命題論理最後の話題は、どんな命題変数でも成り立つ同値命題、「恒真命題($tautology$)」です。これらはすべて真理値表を使うことで簡単に示すことができます。
- 2.と3.はド・モルガンの法則(De Morgan’s laws)
- 4.は二値論理を表す性質「排中律(Law of the excluded middle)」という性質
- 5.は二重否定でした。
- 6.は高校の証明で有名な「対偶(Contraposition)」
- 9.は命題の「推移律(Transitive relation)」
- 10.は同値の「対称律(Symmetric relation)」
- 11.は「ならば」の「対称律」
- 12.と13.は命題の「分配律(Distributive law)」
- 14.と15.は「$\wedge$」と「$\vee$」について書き換えてよいことを示す
- 16.と17.は論理積と論理和の「結合律(Associative law)」
- 18.は論理積と論理和の「可換律(Commutative law)」
このようにして、「$\iff$」は数式の「$=$」と同じ扱いができることがわかります。また、「$\overset{def}{\iff}$」も恒真命題として言葉を定義しています。
各題材初めの定義は、恒真命題を定義として固定し、そこから得られる事実を枝伸ばしで議論していきます。
おわりに
今回で、命題論理の主要な言葉を用意できました。ですが、まだ集合を定義するための言葉が必要です。その言葉は、命題の範囲を広げる「述語」です。しかし、命題論理に条件が少し増えるだけなので簡単に受け入れられると思います。また今回の恒真命題は、集合の性質を示す時に必要になるので自分で真偽を確認してみてください。
次回は、述語を扱います。
以上、ケンけんでした。
2023/10/28更新(恒真命題に結合律と可換律を追加しました。)
参考文献
今回引用した高校数学の参考書
[1]東京書籍 NEW ACTION LEGEND 思考と戦略 数学Ⅰ+A