NST-4:因果関係を一気に記号で かつ・または

こんにちは!ケンけんです。前回は、2つの命題からなる含意「$\Rightarrow$」を定義しました。

今回は、命題の間の「結合」について取り扱います。

キーワード;論理積(かつ)・論理和(または)

導入

学校の活動では、他者と協力して行うものがあり体育では多い印象です。

次の例を見てみましょう。

例 NST-4-1

$A$さんと$B$さんが二人三脚をします。

命題$P$;$A$さんはこけずに走り切った。

命題$Q$;$B$さんはこけずに走り切った。

命題$R$;$A$さんたちはこけずに走り切った

$R$が真の時、$A$さんと$B$さんについて

「$A$さんはこけずに走り切った。また$B$さんはこけずに走り切った。」

といえる。

二人三脚はどちらかがこけると二人そろってこけます。なので、命題$R$で「こけずに走り切れた」ことがわかっているとき、$A$さんも$B$さんもこけなかったことを意味します。この時、「」内の文章は真で命題です。逆にどちらかがこけてしまった場合、一緒にこけるので命題$R$が偽となってしまいます。

「また」は、2つの命題が同時に成り立つので「かつ」でもいいでしょう。そして、$P$と$Q$により$$PかつQ$$と書けます。この「かつ」を記号化すれば、文章全体を記号で書けます。

「二人三脚」以外に、「大縄跳び」、「集団行動(競技)」も一人のミスで失敗や、全体の行動が乱れるといったことが言えるので「かつ」を使って表現できるでしょう。(作ってみて下さい。)

次に、逆の例を考えてみましょう。

例 NST-4-2

命題$P$;自転車の前輪ブレーキが壊れていない。

命題$Q$;自転車の後輪ブレーキが壊れていない。

命題$R$;自転車が止まれる

$R$が真の時、自転車について

「自転車の前輪ブレーキは壊れていない。または後輪ブレーキは壊れていない。」

といえる。

自転車は前輪と後輪に別々のブレーキがあり、一方が故障していても、もう一方が故障していない場合は停止はできます。「停止できる」命題$R$が真なので、どちらかのブレーキは故障していないことがわかります。もちろん、どちらのブレーキが故障していないときも停止できます。逆に、どちらも故障しているときは、自転車は止まれないので$R$が偽になってしまいます。

そして、$P$と$Q$を使うと$$PまたはQ$$と記号で書けて、「または」を記号化すれば文章を記号で表現できます。

定義

では、「かつ」と「または」を記号化しましょう。

定義 NST-4-3

$P$、$Q$;命題

$P \wedge Q$;$P$と$Q$の論理積($logical product$)

$$P \wedge Qは「PかつQ」を表す命題$$

$P \vee Q$;$P$と$Q$の論理和($logical sum$)

$$P \vee Qは「PまたはQ」を表す命題$$

命題の否定から、「$P \wedge Q$」、「$P \vee Q$」で一つの命題です。そして、$P$・$Q$とその真偽がわかれば、「$P \wedge Q$」、「$P \vee Q$」の意味と真偽が自然にわかります。

論理積・論理和は、二つの命題から一つの命題を新しく作るため「$\Rightarrow$」と同じ結合です。

この記号を用いると先の例は、真な命題$R$も用いると、

  • 「」内は「$P \wedge Q$」で、全体は「$R \Rightarrow (P \wedge Q)$」(4-1)
  • 「」内は「$P \vee Q$」で、全体は「$R \Rightarrow (P \vee Q)$」(4-2)

と書けて記号化できました。

論理積と論理和は裏表?

例4-1と4-2の中で偽になる状況も考えていました。偽の否定は真になるので、$\neg (P \wedge Q)$が真となります。そして、二人三脚の例では「$A$さんたちはこけた」場合、少なくとも$A$さんか$B$さんのどちらかがこけたことになります。もちろんどちらもこけた場合のあり得ます。この表現、論理和の方でありました。

$$「自転車が止まれた」場合、前輪か後輪のいずれかのブレーキは故障していなかった。$$

$$もちろんどちらも故障していない場合も停止できる。$$

論理積の否定は論理和になるようです。ではこの場合、どのような表現ができるでしょう。

考察 NST-4-4

$A$さんと$B$さんが二人三脚をします

命題$P$;$A$さんはこけずに走り切った 命題$Q$;$B$さんはこけずに走り切った

今、真な命題$R$「$A$さんたちはこけてしまった」を用意する。

「$A$さんはこけずに走り切った。また$B$さんはこけずに走り切った。」は偽の命題である。

つまり、$A \wedge B$が偽となるため、$\neg (P \wedge Q)$が真となる。

この場合、

  • $A$さんか$B$さんのどちらかはこけた $\Rightarrow $ $\neg P$か$\neg Q$のどちらかは真
  • $A$さんと$B$さんどちらもこけた $\Rightarrow $ $\neg P$と$\neg Q$が真

つまり、「$(\neg P) \vee (\neg Q)$」が真となります。そして、この命題は、$\neg (P \wedge Q)$から得られたものです。

もちろん、論理和の否定が論理積で表すこともできて、$\neg (P \vee Q)$から$(\neg P) \wedge (\neg Q)$が得られます。(自分で確認してみてください)

以上から、論理積と論理和は次のことがわかります。

  • 否定を通して関係を持つ
  • その真偽も一致する

おわりに

実は、「二人三脚」と「自転車ブレーキ」の例はこの記事書いているときに思いつきました。また、前回「ならば」を扱った上で例に使うことで、直接例で「かつ」、「または」を説明するよりも、話を納得できるようにしました。特に「または」の「自転車」は真偽を書きやすいと思います。

勘がいい人は気付いたでしょうが、論理積と論理和の否定による結びつけは、ド・モルガンの法則の命題論理版です。これを現在の言葉だけではそれを説明できません。しかし、説明するための道具と考えは実は、もうそろっています。

次回はここまでの記号を用いて、命題が同じ(同値)であることを定義します。

以上、ケンけんでした。

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