NST-0:数学の作法 それだけじゃない基礎理論 集合論

こんにちは!ケンけんです。今回から素朴集合論の記事を書いていこうと思います。集合は高校からのつながりで道具として見ることも多いです。

そのため、集合論そのものの面白味と興味が記述されているものが少なく感じたため今回の記事作成に至りました。

集合といえば?

おそらく集合は高校で既に触れており、手元に残っている本では次のような定義となっています。

  • 集合・・・ある条件を満たすものの集まり
  • 要素・・・集合をつくっている個々のもの
  • $a$は集合$A$の要素であるとき、$a$は$A$に属するといい,$a \in A$または$a \ni A$で表す。
  • また、$b$が集合$A$の要素でないことを$b \notin A$または$A \not\ni b$で表す。
東京書籍 NEW ACTION LEGEND 思考と戦略 数学Ⅰ+A p74

このほかに部分集合、共通部分などがあり、ベン図で集合を記述して集合を可視化して…といったことが繰り返されます。そして印象が残ってるタイプの問題で次のようなものを作ってみました。

例 NST-0-1

総人数14人の生徒がA大学、B大学に出願しました。そのうちA大学を受験した生徒が7人、B大学を受験した生徒が12人受験しました。この時、どちらの大学も受験した生徒は何人でしょうか?

現実的な人数をにしましたが、学生時代に持っていた青チャートにこんな問題があったように思います。ちなみに答えは、5人です。集合$X$の要素の個数を$N(X)$、総人数14を全体集合$U$で、A大学、B大学を受験した生徒の集合をそれぞれ$A$、$B$と置くと、$$N(X)=N(A)+N(B)-N(A \cap B)$$だからそれぞれに当てはめて考えるとよい、と。

で、おそらく大半の方が「こんな面倒なことをしてわざわざ考える必要ある?」と思ったのではないでしょうか?実際問題考えている対象が有限で収まっている場合は数え上げればわかることで集合の知識など必要ありません。というかほとんど内容的に数学Aの組み合わせの分野の話ぐらいしかできません。

ではなぜ集合が必要なのでしょう?それは、数学では無限の世界の研究が必要になるからです。

なぜ無限はくせ者か?

無限というと「果てしなく続く」や「限りが無い」などのイメージがあるでしょう。辞書では次のようになっています。

無限

[名・形動]数量や程度に限度がないこと。また、そのさま。

小学館 デジタル大辞泉

このように限度がないなどと表現し、大きさを測れないものという認識が一般的でしょう。では、本当に大きさを測ることはできないのでしょうか?また、一見有限に見えるものも調べると無限だったということもあり得ます。歴史を顧みると、集合自体は結構古くから何となくで使われてきたのですが、進んだ数学やより本質の部分を考える上では「無限」を避けられなくなったです。

例えば、次のことが成り立ちます。

例 NST-0-2

閉区間$[0,1]$と実数全体の集合$\mathbb{R}$は等濃である。

等濃とは、無限の世界では閉区間という$\mathbb{R}$(数直線)の一部は全体$\mathbb{R}$と集合として同じ大きさを持っているのです。自然数の無限は有理整数、有理数の無限と同じタイプであることは数学の話題でインパクトがある話題ですね。しかし、自然数の無限と実数の無限は別のタイプであることが集合の比較からわかります。

これは、測れないはずの無限が数学では比較できることを示していて人間の直感に反しています。この事実は長さ(距離)や四則演算(加減乗除)をなくしても成立するのですから、いかに不可思議なことかがわかります。

私は、「数学の言語」という言葉だけでなく、この無限の比較と直感からの離脱が「集合論」の一つの目標であると考えています。直感は先に挙げた長さや演算、図示することにかなり依存しており、それらの情報を抜いた集合の考えは人間の認識するには大きすぎる、または広すぎる世界です。この直感的認識を排除することで、抽象代数学、現代幾何学などの数以外の対象や書けない図形などの理解を深めることができると基礎に立ち返ったときに感じました。

扱う内容と方針

とはいえ、集合論もとい論理学は解析学並みに沼な分野なので到達点を決めておかないと目的を見失いかねません。そこで、このシリーズでは次の点を目標とします。

  • 命題論理・述語論理の理解
  • 集合と写像
  • 順序関係と同値関係
  • ベルンシュタインの定理(ゴール)

4点目の強そうな人名がついている定理がまさしく無限の比較を行うことができる道具です。そのためには順序と同値が必要なので3点目に取り入れています。

ただし、例なしでは大抵の集合と位相の教科書のようにたんぱくな内容になってしまう上、挫折しかねないのでその都度例や動機を加えようとは思います。(動機はかなり筆者の主観も入るのでそんな考えもある程度にとどめてください。)また、一部は素朴集合論で証明できない事実が必要になる場合があります。(Zornの補題、選択公理など)これらはより広く一般的な公理的集合論を用いる必要があり、今回の趣旨には反するため認めて進もうと思います。

終わりに

集合論は、高校でさらっと学んだ上で大学でも何となくで終わるため、重要さを理解しずらいです。しかし、ここを適当にしていると大方高等数学でこけます。(実体験)また、せっかく学ぶのだから分野の目的を知り、新しい考えや定義に対し「なぜこの定義なのか」と深い学習をする練習として最適であると考えます。高校の知識だけでも結構な例や動機を探れますし、私が考えた動機もあくまで一例で、それを見て自分で例や動機を確立することが大切であると思います。そんなきっかけになれるように記事を書いていこうと思います。

以上、ケンけんでした。

参考文献

  • 集合と位相への入門 ーユークリッド空間の位相ー 鈴木晋一 著
  • 数学の基礎 集合・数・位相 齋藤正彦 著
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